「畑なんて、たいした値段にならないでしょう」
群馬で相続の相談を受けていると、農地についてはほぼ必ずこう言われます。半分は当たっていて、半分は外れています。畑の相続税評価は、ある区分に入れば驚くほど低く、別の区分に入れば宅地並みになります。同じ広さの畑で、評価額が十倍以上違うことも珍しくありません。
私は高崎市江木町で相続税の申告を受けている公認会計士・税理士の長島祐太です。この記事では、農地の相続税評価を決める4つの区分と、その見分け方、そして金額に差がつく箇所を書きます。
この記事の内容
農地は4つに分かれる
相続税では、田と畑をまとめて農地と呼び、場所と規制の状況によって4つに分けて評価します。
・純農地:農業振興地域の農用地区域内など、宅地への転用が厳しく制限されている農地
・中間農地:純農地ほどではないが、転用に制限がある都市近郊の農地
・市街地周辺農地:市街地になりつつある区域の農地
・市街地農地:市街化区域内の農地や、転用の許可を受けた農地
市街化区域の中でも、生産緑地に指定されている農地は別扱いです。営農を続ける義務があり、自由に宅地にできないので、その制限を考慮して評価を下げます。高崎や前橋の市街化区域に農地を持っている方は、指定の有無を市役所で確認してください。
評価の方法は区分ごとにまったく違います。純農地と中間農地は、固定資産税評価額に倍率を掛ける倍率方式。市街地農地は、その畑が宅地だったらいくらかを出し、そこから造成費を引く宅地比準方式。市街地周辺農地は、市街地農地として計算した額の80%です。
農地の固定資産税評価額は、農地として課税するためにもともと非常に低く設定されています。倍率方式で評価される純農地と中間農地は、この低い評価額が出発点になるので、評価額も低く収まります。一方、宅地比準で評価される農地は、出発点が宅地の値段です。区分の違いが、そのまま桁の違いになります。
区分は評価倍率表で見る
自分の農地がどの区分に入るかは、国税庁の評価倍率表で確認します。相続が起きた年分を選び、群馬県、市町村、町名・大字名と進むと、田と畑の欄に次のような記載があります。
・「純 20」のように「純」と数字:純農地で、倍率が20倍
・「中 40」のように「中」と数字:中間農地で、倍率が40倍
・「周比準」:市街地周辺農地(宅地比準の80%)
・「比準」「市比準」:市街地農地(宅地比準)
路線価地域にある農地は、路線価を使って宅地としての価額を出します。市街化区域内の畑が高崎や前橋の市街地にあれば、この形になります。
一つ注意があります。倍率表は町名・大字単位の記載なので、同じ大字の中に農用地区域とそれ以外が混在していることがあります。その場合、倍率表には区分ごとに別の記載があり、自分の畑がどちらに当たるかは市町村の農政担当で確認が必要です。ここを取り違えると、評価額が一桁ずれます。
同じ1,000㎡の畑で比べる
区分でどれだけ変わるかを、仮の数字で計算します。1,000㎡の畑で、固定資産税評価額が8万円、近くの宅地の価額が1㎡3万円、造成費が1㎡800円とします。数字はすべて説明用の仮置きです。
純農地(倍率20倍)の場合
8万円 × 20 = 160万円
中間農地(倍率40倍)の場合
8万円 × 40 = 320万円。倍率は純農地より高くなりますが、出発点が農地としての低い評価額なので、ここまではまだ数百万円の世界です。
市街地農地の場合
(3万円 − 800円)× 1,000㎡ = 2,920万円
市街地周辺農地の場合
2,920万円 × 80% = 2,336万円
純農地と市街地農地で、約18倍の差です。相続人が子2人なら基礎控除は4,200万円。純農地なら畑は財産の端数ですが、市街地農地なら畑だけで基礎控除の7割に届きます。「畑だから安い」かどうかは、区分を見るまで分かりません。
宅地比準で引く造成費
市街地農地と市街地周辺農地は、宅地としての価額から造成費を引きます。畑を宅地にするには、整地をし、場合によっては土を盛り、土留めを作る必要があるからです。
造成費の単価は、国税庁が国税局ごとに毎年定めています。群馬県は関東信越国税局の金額表を使います。項目は次のとおりです。
・整地費(平らにならす費用)
・伐採・抜根費(木や根を取り除く費用)
・地盤改良費(湿田など、地盤が弱い場合)
・土盛費(道路より低い土地に土を入れる費用)
・土止費(盛った土を留める擁壁の費用)
差がつくのは、どの項目を積み上げるかです。整地費だけを引いて終わっている評価をよく見ますが、道路より低い田なら土盛費と土止費も引けます。傾斜のある畑なら、傾斜度に応じた単価が別に用意されています。現地を見て、道路との高低差や地盤の状態を確かめたかどうかで、引ける金額が変わります。
区分のほかに金額が動く箇所
現況が本当に農地か
相続税は、課税明細書の地目ではなく、相続が起きた日の現況で判断します。明細書では畑でも、実際には砂利を敷いて駐車場にしていれば宅地などとして評価します。逆に、何年も耕していない畑は、現況次第で農地のままか、原野として扱うかの判断が分かれます。
広い市街地農地
宅地比準で評価する市街地農地でも、地積規模の大きな宅地の評価を使えることがあります。群馬は三大都市圏以外なので、1,000㎡以上が目安です。広い畑を宅地として売るには道路を通す必要がある、という事情を評価に反映する規定です。要件を満たすかどうかは、地区区分や容積率も見て判断します。
人に貸している農地
農地法の許可を得て賃貸している農地は、借りている人の耕作権の分を差し引いて評価します。一方、親戚に無償で耕してもらっているだけの農地は、差し引けません。「貸している」と言っても、契約の形によって扱いが違います。
相続人が農業を続けるなら
農地を相続した人が農業を続ける場合、農地にかかる相続税の一部について納税を猶予してもらえる制度があります。評価額とは別の話ですが、市街地農地のように評価が高く出た農地ほど効きます。一方で、途中で農業をやめると猶予されていた税額と利子税を納めることになるので、後継ぎの見通しと合わせて判断が必要です。
「畑だから安い」とは限らない
群馬の相続では、自宅の周りに畑が何筆もある家が多くあります。そのうち1筆でも市街地農地や市街地周辺農地に当たれば、財産の総額は大きく動きます。「うちは田舎だから相続税は関係ない」という見立てが外れるのは、たいていこの畑です。
実務で最初にやるのは、市町村ごとに名寄帳を取り、農地を1筆ずつ書き出すことです。筆ごとに倍率表の区分を当て、宅地比準になる筆だけ現地を見に行く。この順番なら、手間をかけるべき畑とそうでない畑がはっきり分かれます。
逆もあります。区分を確かめたら純農地で、畑の評価はわずかだった。宅地比準の畑も、造成費をきちんと積み上げたら数百万円下がった。農地は、確かめる手間をかけた分だけ評価額が正確になります。
申告が要るかどうかの目安は相続税はいくらからかかるかの記事、自分で申告まで進められるかの判断は自分で相続税申告ができるかの記事、依頼先の選び方は相続税に強い税理士の見分け方の記事に書いています。
畑が何筆もある方は、名寄帳を1枚お持ちください
市町村の名寄帳か固定資産税の課税明細書があれば、1筆ずつ評価倍率表の区分に当てて、どの畑がいくらになりそうかをその場で整理します。群馬の農地・山林の評価を、公認会計士・税理士 長島祐太が担当します。
たかさき相続税・贈与税相談プラザ(ミノラス会計事務所内)
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