相続税の申告は自分でできるのか|税理士に頼む人と頼まない人の分かれ目【群馬・高崎】

「本を買ってきたんです。自分でやってみようと思って」。無料相談でそう切り出される方が、月に何人かいらっしゃいます。分厚い解説書を鞄から出して、付箋がびっしり貼ってある。私はその方に「やめたほうがいい」とは言いません。まず財産の中身を伺って、そのうえで「これはご自身でできます」と申し上げることもあれば、「この一点だけは危ないです」とお伝えすることもあります。

相続税の申告は、法律上は誰がやっても構いません。税理士でなければできない手続きではありません。問題は、できるかどうかではなく、正しくできるかどうかです。今日はその分かれ目を、実務でよく見ている順にお話しします。

自分で申告している人は、実際どれくらいいるのか

相続税の申告書のうち、税理士が関与しているものは全体のおおむね8割台です。裏を返せば、1割から2割の方はご自身で申告されています。決して珍しいことではありません。

所得税の確定申告と比べると税理士関与の割合が高いのは、相続税が「一生に一度か二度」の手続きで、財産評価という専門的な作業を含むからです。毎年やる手続きなら慣れますが、相続税は慣れる前に終わります。それでも自分でやり切る方がいるのは、財産の中身がシンプルなケースが一定数あるからです。

ご自身でできる可能性が高いケース

次の条件がほぼ揃っているなら、私はご自身での申告を止めません。

・財産が預貯金と上場株式が中心で、不動産は自宅一つだけ

・その自宅が整った形の土地で、路線価図の一本の道路にきれいに面している

・相続人が少なく、遺産分割で揉めていない

・財産の合計が基礎控除を少し超える程度で、納税額もさほど大きくない

・申告期限まで、まだ半年以上ある

この条件下なら、国税庁の手引きと申告書様式で組み立てられます。財産の大半を占めるのが預金なら、評価の判断がほとんど発生しないからです。実際に、ご自身で作った申告書の内容確認だけを有料でお引き受けしたケースもあります。

やめたほうがいいケース

土地が複数ある、または形が悪い

相続税の土地評価は、路線価に面積を掛けて終わりではありません。間口が狭い、奥行きが長い、二方向の道路に面している、傾斜がある、市街化調整区域にある。こうした事情ごとに補正が用意されていて、それを使うかどうかで評価額が2割3割変わります。高崎の郊外には広い敷地や不整形地が多く、そのまま計算すると本来より高い税額になりがちです。減額できる要素を見落としても、税務署は教えてくれません。

特例を使って、税額がゼロになる予定である

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使うと、納税額がゼロになることがあります。ここに落とし穴があります。これらの特例は、期限内に申告書を出して初めて使えるものです。「税金がかからないなら申告もいらない」と考えて何もしなかった結果、特例が使えず本税と加算税が出た、という事故が現実に起きています。詳しくは小規模宅地等の特例の記事で書きました。

生前贈与や名義預金がある

お子さんやお孫さん名義の通帳に、お父様が長年積み立てていた。この預金は名義がどうであれ、実質的にお父様の財産として相続財産に含めるのが原則です。生前贈与も、亡くなる前の一定期間内のものは持ち戻して計算します。制度改正で持ち戻しの期間が段階的に延びており、いつの贈与が対象になるかの判定が以前より複雑になりました。ここは自己流の判断が最も危ない領域です。

自社株や事業用資産がある

非上場会社の株式には、市場価格がありません。会社の規模に応じて類似業種比準や純資産価額といった方法で評価します。これは相続税の中でも特に専門性が高い分野です。会社を経営されていた方の相続は、ご自身での申告はお勧めしません。

怖いのは「出せた」と「正しかった」の差

申告書は、多少の間違いがあっても受理されます。窓口で内容を精査して突き返されることは、まずありません。だから提出できた時点では、正しかったかどうかは分からないままです。答え合わせは、早ければ翌年、遅ければ数年後にやってきます。

相続税は、税目の中でも税務調査の割合が高い部類です。調査で申告漏れを指摘されると、本税に加えて過少申告加算税と延滞税がかかります。意図的に隠していたと判断されれば重加算税です。多く払いすぎていた場合は、こちらから更正の請求をしない限り戻ってきません。間違いの方向によって、返ってくる結果がまったく違うわけです。

税理士が関与した申告書には、書面添付という制度を使って「どこをどう確認したか」を添えることができます。この書面がある場合、税務署はいきなり調査に入る前に税理士へ意見を聴く手続きを踏みます。ご自身で申告した場合、この段階は存在しません。

高崎で自分で申告する場合の実務メモ

それでもご自身で進める方のために、高崎で実際に必要になる作業を挙げておきます。

・提出先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署。高崎市内にお住まいだった方なら高崎税務署です

・戸籍は出生から死亡までの連続したものが必要。本籍を移していると複数の市区町村に請求します

・不動産は名寄帳と固定資産評価証明書を市役所で取得。共有分や私道が漏れやすい箇所です

・路線価は国税庁の財産評価基準書で確認。高崎は駅周辺の路線価地域と、郊外の倍率地域が混在します

・預金は死亡日の残高証明に加え、過去5年から10年分の入出金履歴を取っておくと、あとから慌てません

この資料集めだけで、二か月から三か月かかるのが普通です。申告期限は亡くなったことを知った日の翌日から10か月しかありません。逆算の感覚については申告期限10か月の記事をご覧ください。

費用と手間を、どう天秤にかけるか

税理士報酬を払いたくない、という気持ちは自然なものだと思います。判断の材料として、二つの数字を並べてみてください。

ひとつは、ご自身の時間です。資料収集と評価と申告書作成で、慣れない方なら合計100時間前後は見ておく必要があります。お仕事をしながら、相続の手続きと並行して、四十九日や法要も挟みながらの100時間です。

もうひとつは、評価の差です。土地の補正や特例の適用を一つ見落とすだけで、税額が数十万円から百万円単位で変わることがあります。報酬を払っても、正しく減らせた分のほうが大きくなるケースは珍しくありません。当プラザの相続税申告サポートは165,000円(税込)からで、財産の内容によって変わります。

迷っている段階でご相談ください

私は相続の入門書を書いている立場でもあるので、ご自身で学んで進めようとされる方の姿勢は尊重しています。そのうえで申し上げたいのは、「頼むかどうか」を決める前に、財産の中身を一度専門家の目で見ておいてほしい、ということです。土地が一筆の整形地なのか、補正が効く不整形地なのか。それが分かるだけで、判断は変わります。

初回のご相談では、お持ちいただいた資料の範囲で相続税がかかるかどうかを簡易に診断し、ご自身で進められそうかどうかも率直にお伝えしています。「これはご自身でできます」とお答えして、それで終わった相談も何度もあります。かんたん相続税診断なら、来所前に30秒ほどで目安が分かります。

相続税申告のご相談は、初回無料です

たかさき相続税・贈与税相談プラザでは、相続税がかかるかどうかの簡易診断を初回相談の中で無料で行っています。ご自身で申告できるかどうかの見立てもお伝えします。

TEL 027-335-9606(平日9:00〜17:30)

群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル2階

公認会計士・税理士・行政書士 長島祐太