「前橋は高崎ほど土地が高くないから、うちは相続税の心配はないですよね」
前橋の方から、こう聞かれることがあります。半分は正しい見立てです。前橋の最高路線価は、高崎の3分の1以下です。ただ、住宅地の値段は高崎とそれほど変わりません。相続税がかかるかどうかを決めるのは駅前の最高値ではなく、自分の家の下の土地です。
私は高崎市江木町で相続税の申告を受けている公認会計士・税理士の長島祐太です。この記事では、前橋市の土地の値段、評価の仕方、申告が必要になる家の目安、そして前橋税務署への申告について書きます。
この記事の内容
前橋の土地の値段
2026年の公示地価で、前橋市の住宅地の平均は1㎡あたり5万1,537円、前年から0.14%の上昇です。坪にすると約17万円。高崎の住宅地が1㎡5万円台後半ですから、住宅地に限れば両市の差は小さいのです。
差が大きいのは中心部です。令和8年分の路線価で、前橋市の最高地点は本町2丁目の1㎡14.5万円。高崎市八島町の47万円と比べると、3分の1以下です。公示地価でも、市内最高は本町2丁目の地点で1㎡17万9,000円でした。
用途別に見ると、商業地の平均は1㎡7万134円で0.42%の上昇、工業地は2.96%の上昇でした。群馬県全体では2026年に34年ぶりに地価がプラスに転じましたが、前橋も住宅地・商業地ともに小幅ながら上向いています。下落が続く渋川などとは、ここが違います。
一方で、市内の値段の幅はとても広い。公示地価の最低地点は富士見町の山林で、1㎡156円です。同じ前橋市の中で、中心部と赤城山麓では1,000倍以上の開きがあります。「前橋の土地」と一括りにできないのは、この幅があるからです。
市内に路線価地域と倍率地域がある
相続税で土地を評価する方法は、路線価方式と倍率方式の2つです。前橋市には、国税庁の路線価図と評価倍率表の両方が用意されています。つまり、市内に路線価で評価する地域と、固定資産税評価額に倍率を掛けて評価する地域が混在しています。
背景には合併があります。前橋市は2004年に大胡町・宮城村・粕川村を、2009年に富士見村を編入し、市域が赤城山の南麓まで広がりました。市の名前は同じでも、中心部と旧町村部では土地の性格がまったく違います。評価の方法が地区によって分かれるのは、そのためです。
中心市街地や幹線道路沿いは、路線価図に道路ごとの価格が載っています。そこから離れた地区は、路線価図の範囲から外れ、評価倍率表で評価します。どちらになるかは住所で決まり、選ぶことはできません。
確認の手順は簡単です。国税庁の財産評価基準書で、相続が起きた年分、群馬県、前橋市と進み、まず路線価図で自分の土地の前の道路に数字があるかを探します。なければ、評価倍率表で町名を探します。
一つの家で、両方が混ざることもあります。自宅は路線価地域、少し離れた畑や山林は倍率地域。前橋の相続では珍しくない形です。土地ごとに方式を確かめてください。
60坪の家で計算する
路線価は公示地価のおおむね8割の水準に設定されています。前橋の住宅地の公示地価平均5万1,537円から逆算すると、路線価は4万円前後が目安です。60坪、198.35㎡の自宅で計算します。
198.35㎡ × 4万円 = 約793万円
同じ60坪が本町2丁目の14.5万円なら、約2,876万円。前橋市内でも3.6倍の差です。
住宅地の793万円は、自宅だけなら大きな金額には見えません。相続人が子2人なら基礎控除は4,200万円です。土地793万円に建物、預金、生命保険を足して、この線を越えるかどうか。越えなければ申告は要りません。
越える場合でも、亡くなった方が住んでいた家を配偶者や同居の子が相続すれば、小規模宅地等の特例で土地の評価を80%減らせます。793万円は約159万円になります。ただしこの特例は、申告書を出して初めて使えます。
前橋で申告が必要になる家の形
自宅の土地だけで基礎控除を超える家は、前橋では多くありません。申告が必要になるのは、自宅にほかの財産が重なったときです。前橋でよく見る形は次のとおりです。
・自宅の周りに畑があり、その畑が市街化区域の中にある
・自宅とは別に、アパートや貸地を持っている
・長年の勤め先の退職金や年金で、預金が数千万円ある
・親から相続した土地が、中心部に残っている
仮の数字で足してみます。自宅の土地793万円、建物300万円、預金2,000万円。ここまでで約3,093万円で、基礎控除の4,200万円には届きません。ここに市街化区域の畑300㎡が加わり、造成費を引く前の概算で1㎡4万円前後、約1,200万円と評価されると、合計は約4,293万円。造成費をどこまで引けるかで結論が変わる、ちょうど境目の家になります。畑1枚で、申告の要否が動くのです。
特に畑は、場所次第で評価が大きく変わります。市街化区域の中の畑は、宅地の値段を基準に評価します。自宅の横の300㎡の畑が、自宅の土地より高く評価されることも起きます。
前橋税務署への申告
相続税の申告書は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署に出します。前橋市に住んでいた方なら、前橋税務署です。前橋税務署の管轄区域は前橋市全域で、所在地は前橋市大手町2丁目の前橋地方合同庁舎です。
相続人が高崎や東京に住んでいても、提出先は亡くなった方の住所で決まります。相続人の住所の税務署ではありません。
期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。前橋市に死亡届が出されると、その情報は前橋税務署にも届きます。基礎控除を超えそうな家には、亡くなってから半年ほどで「相続税の申告等についてのご案内」が送られてきます。
書面で出す場合は、窓口に持参しても郵送しても構いません。相続人が遠方に住んでいても、前橋まで足を運ぶ必要はありません。e-Taxで電子申告することもできます。
固定資産税の課税明細書や名寄帳は、前橋市役所の資産税課で扱っています。土地が前橋市内に何か所もある場合は、名寄帳を取ると一覧で確認できます。
前橋で評価額に差がつく箇所
前橋の土地で、評価する人によって金額が動きやすいのは3か所です。
一つ目は、路線価地域の土地の形です。奥行が長い、間口が狭い、道路より高い、不整形。こうした事情は補正率で評価を下げられます。「路線価×面積」だけで終わっていないかを確かめてください。
二つ目は、市街地を離れた地区の畑と山林です。倍率地域の農地は、純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地のどれに当たるかで評価の桁が変わります。宅地の値段から計算する農地は、造成費をどこまで引けるかでも差が出ます。
三つ目は、広い土地です。三大都市圏以外の群馬では、1,000㎡以上の宅地は地積規模の大きな宅地として評価を下げられる場合があります。郊外の広い屋敷地や、宅地並みに評価される広い畑で効いてきます。
申告が要るかどうかの目安は相続税はいくらからかかるかの記事、自宅の評価を下げる特例は小規模宅地等の特例の記事、依頼先の選び方は相続税に強い税理士の見分け方の記事に書いています。
前橋の土地の相続も、課税明細書1枚から概算します
固定資産税の課税明細書があれば、土地ごとに路線価地域か倍率地域かを確かめ、申告が必要かどうかの当たりをその場で付けます。前橋税務署への申告も対応しています。公認会計士・税理士 長島祐太が担当します。
たかさき相続税・贈与税相談プラザ(ミノラス会計事務所内)
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