「税務署から来た書類、半年くらい放っておいたんです。今から出して、怒られませんか」
お尋ねの封筒を引き出しにしまったまま、という方は少なくありません。書き方が分からない、兄弟と話がまとまらない、なんとなく怖い。理由はさまざまです。
私は高崎市江木町で相続税の申告を受けている公認会計士・税理士の長島祐太です。この記事では、税務署からのお尋ねや申告要否検討表を返さなかった場合に、その後どんな連絡が来るのか、そしてどの段階までなら軽く済むのかを書きます。
この記事の内容
返さなくても罰則はない。ただし記録は残る
最初に事実を書きます。税務署からのお尋ねや申告要否検討表は、返送が法律で義務づけられた書類ではありません。返さなかったことを理由に、罰金や加算税がかかることはありません。
ただ、税務署の側から見ると、返送のない家は「基礎控除を超えそうだと見て文書を送ったのに、申告も回答もない家」として残ります。税務署がこの家を相続税の対象から外す材料は、何も手元にない状態です。
もう一つ知っておいてほしいのは、相続税の申告期限は、お尋ねを返したかどうかと関係なく進むことです。封筒を引き出しにしまっている間も、相続の開始を知った日の翌日から10か月の期限は近づいています。返送しないまま期限を越えれば、それはもう「お尋ねを返していない家」ではなく「申告をしていない家」になります。
返送すれば、その内容を見て税務署は判断できます。計算の結果が基礎控除以下で、内容に不自然な点がなければ、多くの場合そこで区切りが付きます。返さないことで得をする場面は、ほとんどありません。
返さなかった後に来る順番
返送しなかった場合、その後の流れはおおむね次の順になります。すべての家に全部が来るわけではなく、途中で止まることも、いきなり先の段階が来ることもあります。
1. 再送付
同じ文書、または回答を促す文書が、もう一度届くことがあります。最初の封筒を開けていなかった方は、ここで初めて気づくことも多いです。
2. 電話や文書での連絡
税務署の担当者から、申告の必要がないか確認したい、という趣旨の電話や文書が来ることがあります。財産の内容について簡単に聞かれることもあります。
3. 来署の依頼
資料を持って税務署に来てほしい、という依頼が来ることもあります。この段階でも、多くは申告を促すための連絡です。
4. 税務調査の事前通知
調査の日時や対象を伝える連絡です。ここで流れがはっきり変わります。この通知の前か後かで、後から出す期限後申告にかかる加算税の率が大きく変わるからです。
電話が来た段階は、まだ調査ではない
税務署から電話が来ると、多くの方は「調査が始まった」と受け取ります。けれども、申告の必要を確認するための連絡や、申告を勧める連絡は、税務調査とは区別されています。行政指導と呼ばれる段階です。
この違いが、金額に直結します。調査の事前通知が来る前に自分から期限後申告を出せば、無申告加算税は5%です。通知の後なら10%から25%、調査で指摘されてからなら15%から30%になります。
電話が来たときに確かめてほしいのは、これが調査の通知なのか、申告を勧める連絡なのかです。遠慮せずに担当者に聞いて構いません。申告を勧める連絡の段階なら、まだ通知前の扱いで出せる余地があります。
逆に言えば、電話が来てからも放っておくと、次は調査の通知です。電話は、軽く済ませられる最後の合図だと考えてください。
調査になったら何を見られるか
相続税の調査は、事前に日程の連絡があり、自宅に調査官が来るのが一般的です。聞かれるのは、亡くなった方の経歴、生前の暮らしぶり、病気になってからのお金の管理、財産の保管場所です。
調査の対象になるのは、申告を出した家だけではありません。申告がなかった家に調査が入り、そこで期限後申告を求められることもあります。お尋ねを返さなかった家が、この形で調査に進むことは現実にあります。
重点になるのは預金です。税務署は調査の中で金融機関に照会し、亡くなった方や家族の口座の過去の入出金を確認できます。大きな出金があれば、その行き先を聞かれます。家族名義の口座に定期的に入金されていれば、名義預金として扱われる可能性があります。
ここで最も避けたいのは、その場しのぎの説明です。申告をしなかったこと自体は「忘れていた」「かからないと思っていた」で済む場合でも、調査で事実と違う説明をしたり、書類を隠したりすれば、重加算税の対象になり得ます。率は40%です。分からないことは「分からないので調べます」と答えるのが、結局いちばん安全です。
返さなかった理由別の対処
返送できなかった理由によって、次にやることは変わります。
書き方が分からなかった
固定資産税の課税明細書と通帳があれば、概算は出せます。土地、預金、保険の3つを先に埋めてください。基礎控除を大きく下回るなら、その内容で返送すれば終わりです。
相続人のあいだで話がまとまらなかった
分け方が決まっていなくても、財産の総額は計算できます。検討表に必要なのは総額と相続人の数なので、分割がまとまるのを待つ必要はありません。基礎控除を超えるなら、法定相続分で仮に計算して申告を出す道があります。
誰が書くか決まらなかった
文書は相続人のうち一人宛てに届くことが多く、宛名の人が書かなければいけないと思われがちです。実際には、財産の内容が分かる相続人が代表して書けば足ります。遠方に住む兄弟に届いたのに、財産を把握しているのは実家近くの自分、という場合は、宛名の人と相談して書く人を決めてください。
超えていそうで怖かった
この方がいちばん急ぐべきです。期限前なら期限内に申告を出す。期限を過ぎていても、調査の通知前なら無申告加算税は5%です。自宅を配偶者や同居の子が相続していれば、小規模宅地等の特例で税額が大きく下がり、ゼロになる家もあります。計算してみるまで、本当に怖い金額かどうかは分かりません。
迷っているなら、返すほうが軽い
冒頭の質問への答えは、「今から出して怒られることはありません」です。何か月遅れて返送しても、それ自体を責められることはありません。計算してみたら基礎控除を下回っていて、検討表を返して終わる家もあります。何か月も抱えていた心配が、書類を揃えて一度計算するだけで片付くことは珍しくありません。
返送するときは、控えを必ず手元に残してください。コピーでも写真でも構いません。後日、税務署から内容について問い合わせがあったとき、何を書いて出したかが分からないと、答えがぶれます。
返さないことで状況が良くなることは、まずありません。基礎控除以下なら返して終わる。超えるなら早く出すほど軽い。どちらに転んでも、先に動いたほうが負担は小さくなります。
申告が要るかどうかの目安は相続税はいくらからかかるかの記事、自分で申告まで進められるかは自分で相続税申告ができるかの記事、依頼先の選び方は相続税に強い税理士の見分け方の記事に書いています。
しまい込んだ封筒を、そのまま持ってきてください
何か月前に届いたものでも構いません。税務署からの文書と固定資産税の課税明細書、通帳があれば、返送で済むのか、申告が必要かをその場で判断します。税務署から電話が来ている方は、その内容もお聞かせください。公認会計士・税理士 長島祐太が担当します。
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