教育資金の一括贈与が終わった後、孫にどう渡すか|上限なしで非課税になる方法【群馬・高崎】

「孫の教育資金に1,500万円を非課税で渡せる制度、まだ間に合いますか」

今年に入ってから、何度かこの質問を受けました。答えは、間に合いません。

教育資金の一括贈与の非課税措置は、令和8年3月31日で終わりました。延長されず、そのまま終了です。令和8年4月1日以後は、新しく契約することができません。

ただ、お孫さんに教育費を出すこと自体ができなくなったわけではありません。むしろ、多くのご家庭にとっては、終わった制度より使いやすい方法が残っています。金額の上限がなく、金融機関の口座も領収書の提出も要らない方法です。

何が終わって、何が残っているのかを整理します。

終わった制度、残った制度

先に、状況を整理します。

・教育資金の一括贈与(1,500万円まで非課税)→ 令和8年3月31日で終了

・結婚・子育て資金の一括贈与(1,000万円まで非課税)→ 令和7年3月31日で終了

どちらも、期限までに拠出した資金については、契約が続く間は引き続き非課税の扱いです。すでに口座をお持ちの方が、急に使えなくなるわけではありません。新規の契約ができないということです。

廃止の理由として説明されているのは、利用が伸びなかったこと、そして富裕層に偏って使われ、格差の固定につながるという指摘です。

残っているのは次の3つです。

・扶養義務者からの都度贈与(教育費・生活費として、その都度支払う)

・暦年贈与の年110万円

・相続時精算課税の年110万円(孫が18歳以上の場合)

このうち、金額の制限がないのは1つ目だけです。順に見ます。

上限なしで非課税になる「都度贈与」

扶養義務者どうしのあいだで、生活費や教育費として必要な都度に渡す財産には、そもそも贈与税がかかりません。相続税法にそう定められています。

祖父母は孫の扶養義務者に含まれます。ですから、おじいさまが孫の大学の授業料を払う。これは非課税です。金額の上限はありません。

終わった制度と比べてみます。

・上限 → 一括贈与は1,500万円まで。都度贈与は上限なし

・手続き → 一括贈与は金融機関で契約、領収書の提出が必要。都度贈与は手続きなし

・年齢 → 一括贈与は30歳未満。都度贈与は制限なし

・使い残し → 一括贈与は残額に課税。都度贈与は残額が生じない

・相続時 → 一括贈与は管理残額が相続財産に加算される場合あり。都度贈与は加算なし

こうして並べると、都度贈与のほうが有利な場面が多いことが分かります。一括贈与の利点は「まとめて渡せる」ことだけでした。それも、ご本人が元気なうちは、都度払えば済む話です。

教育費として認められる範囲は広く、入学金、授業料、施設費のほか、教材費や文具代、通学のための交通費も含まれます。学習塾や習い事の月謝も対象です。

都度贈与でやってはいけないこと

制限がないぶん、外し方も決まっています。

まとめて渡してはいけません。「4年分の学費として600万円」と一度に渡すと、その時点で贈与税の対象です。必要なときに、必要な額を渡す。これが条件です。

預金として残してはいけません。渡したお金が使われずに孫の口座に貯まっていると、教育費ではなく財産の移転と見られます。渡した年のうちに使われていることが大事です。

この2つを確実に満たす方法があります。学校の口座へ直接振り込むことです。孫の口座を経由しないので、貯まりようがありません。大学の学費なら、振込依頼書の名義を祖父にするだけで済みます。記録も残ります。

それから、株式や不動産の購入に充てられた分は当然に課税されます。名目が教育費でも、実際の使い道で判断されます。

数字で見る|孫2人の大学費用を出した場合

効果を数字にします。

・財産の総額 1億5,000万円

・相続人は子2人、孫は3人

・基礎控除は3,000万円+600万円×2人=4,200万円

何もしなければ、相続税の総額は1,840万円です。

お孫さん2人の大学の学費を、4年間にわたって都度払ったとします。私立大学で年間150万円、4年で600万円。2人で1,200万円です。

この1,200万円は非課税で、相続財産にも加算されません。課税価格は1億3,800万円、相続税の総額は1,520万円。差は320万円です。

さらに、お孫さん3人に毎年110万円の暦年贈与を5年続けたとします。1,650万円。お孫さんが相続で財産を取得しなければ、生前贈与加算の対象外です。

両方を行うと、動かした金額は2,850万円。課税価格は1億2,150万円、相続税は1,190万円。何もしない場合との差は650万円になります。

終わった1,500万円の制度を惜しむより、この2つを組み合わせるほうが確実です。しかも都度贈与のほうは、使い残しの心配がありません。

1,500万円を入れなかった方の話

今年の3月、制度の期限が迫っていた時期のご相談です。

高崎市内の70代の方で、お孫さんが2人。金融機関から「3月末で終わります、今のうちに」と勧められ、1,500万円ずつ入れるべきか迷っていらっしゃいました。

うかがうと、上のお孫さんは高校生、下は中学生。進学先は決まっていません。仮に2人とも国公立に進めば、4年分の学費は1人あたり250万円ほどです。1,500万円を入れれば、大半が使い切れずに残ります。

残額には贈与税がかかります。しかも一般税率で計算されるため、税率は高くなります。使い切れる見込みのない金額を入れるのは、後の世代に負担を残すことになります。

その方は契約を見送られました。代わりに、進学が決まってから学費を直接学校に振り込む形にすることと、暦年贈与を始めることをお勧めしました。ご本人はまだお元気で、下のお孫さんの大学卒業まで見届けられる可能性が高い。それなら、都度払いのほうが無理がありません。

制度が終わったことで、この判断で困る場面はなくなりました。選択肢が減ったぶん、迷いも減っています。

すでに口座がある方が気をつけること

令和8年3月末までに契約された方は、そのまま使い続けられます。ただし、2つの出口に注意してください。

ひとつ。お孫さんが30歳になった時点で残額があると、その残額に贈与税がかかります。在学中などの事情があれば最長40歳まで延びますが、いずれ精算されます。計画的に使い切ってください。

ふたつ。契約期間中に贈与した方が亡くなると、その時点の残額が相続財産に加算されます。令和5年4月1日以後に拠出した分は、原則として全額です。お孫さんが23歳未満である場合などは加算されませんが、その場合でも、相続税の課税価格が5億円を超えるときは加算の対象になります。

そして加算されたとき、お孫さんには相続税額の2割加算がかかります。非課税で渡したつもりの資金に、2割増しの相続税がかかるわけです。

口座の残高がいくらか、お孫さんは今おいくつか。この2つを確認しておいてください。残高が多いなら、使うペースを上げる判断もあります。

孫に渡す順番

お孫さんに財産を渡すなら、順番があります。

まず都度贈与。実際にかかる教育費は、これで出す。上限がなく、手続きも要りません。学校へ直接振り込めば、証拠も残ります。

次に暦年贈与の110万円。教育費とは別枠で使えます。お孫さんは相続で財産を取得しなければ加算されないので、7年ルールの影響を受けません。贈与契約書を作り、振込で渡し、通帳はお孫さんご本人が管理する。ここを外すと名義預金と見られます。

お孫さんが18歳以上なら、相続時精算課税という選択肢もあります。年110万円の基礎控除は相続財産に加算されません。暦年贈与との比較はこちらの記事に書きました。ただし一度選ぶと戻せないので、慎重に判断してください。

最後にひとつ。お孫さんを生命保険の受取人にしたり、遺言で財産を残したりすると、そのお孫さんは「相続により財産を取得した人」になります。すると過去の贈与がすべて加算対象になり、相続税額も2割増しです。生前に渡すことと、相続で残すことは、両立させないほうがいい場合があります。

どこまでやるべきかは、財産の総額しだいです。相続税がかからない家であれば、教育費を出す以上のことをする必要はありません。

お孫さんへの援助を考えている方へ

たかさき相続税・贈与税相談プラザでは、財産の総額とご家族の年齢構成をうかがったうえで、いくらをどの方法で渡すのが有利かを試算しています。すでに教育資金口座をお持ちの方の残額の扱いについても、あわせてご相談ください。

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公認会計士・税理士 長島祐太