「祖父の代からの山が10町歩あります。場所もよく分からないんですが、これで相続税がかかるんでしょうか」
群馬の相続で、山林の相談は必ず出ます。県土の3分の2が森林で、赤城や榛名の山麓、西毛の丘陵、利根沼田や吾妻の山間部まで、山を持っている家は珍しくありません。そして、ほとんどの方が面積を心配し、ほとんどの場合、心配は要りません。10町歩の山の相続税評価は、300万円前後です。
この記事では、群馬の山林が相続税でどう評価されるか、3つの区分、倍率方式の計算、保安林の減額、立木の扱い、筆の拾い方、そして要らない山を手放す方法まで、県内どこの山でも共通する基本を書きます。地域ごとの事情は、各地域の記事で補います。
目次
山林は3区分。群馬の山はほぼ「純山林」
相続税では、山林を3つに分けて評価します。
・純山林:山の中の山。固定資産税評価額に倍率を掛ける
・中間山林:集落や市街地に近い山。同じく倍率方式だが、倍率が高い
・市街地山林:市街化区域の中にある山。宅地だった場合の価格から造成費を引く
どの区分に入るかは、国税庁の評価倍率表に、市町村と字ごとに書いてあります。群馬の山林は、面積で言えば圧倒的に純山林です。赤城山麓、榛名山麓、妙義、碓氷峠、利根沼田、吾妻の山は、まず純山林です。中間山林は、渋川や前橋の市街地に近い里山、藤岡や富岡の集落の裏山などです。
市街地山林は、高崎や前橋の市街化区域に残っている傾斜地や屋敷林で、数は多くありません。ただし、ここだけは宅地並みの評価になりますので、お持ちの方は別の計算が必要です。急な傾斜地で宅地にできない場合は、造成費を引いた結果がマイナスになり、純山林並みの評価に戻ることもあります。
計算:固定資産税評価額に倍率を掛ける
純山林と中間山林の計算は単純です。固定資産税評価額に、評価倍率表の倍率を掛けます。
群馬の純山林の固定資産税評価額は、1平方メートルあたり十数円という水準です。倍率は地域によって数倍ですので、掛けた後の相続税評価は1平方メートルあたり30円から50円程度になります。
冒頭の10町歩で計算します。10町歩は約10万平方メートルです。1平方メートル30円なら300万円、50円なら500万円。相続税の基礎控除が最低でも3,600万円であることを考えると、山林だけで基礎控除を超えることは、まずありません。
固定資産税の課税明細書に山林の評価額が載っていますので、それに倍率を掛ければ、ご自身でも概算が出せます。ただし、倍率表には「純」「中」の区分と倍率が字ごとに並んでいて、同じ市町村でも字が違えば倍率が変わります。筆ごとに字を確認して当てはめます。なお、山林には農地のような「地積規模の大きな宅地」の減額はありません。広いから安くなる、ということはなく、面積に比例して評価が増えます。
保安林なら30〜80%引く
群馬の山で見落とされやすいのが保安林です。水源かん養や土砂流出の防止のために指定された森林で、伐採や開発に制限がかかります。制限がある分、相続税の評価を下げられます。
・一部皆伐(制限が軽い):30%減
・択伐:50%減
・単木選伐:70%減
・禁伐:80%減
300万円の山林が択伐の保安林なら、150万円です。保安林かどうかは登記簿には出ません。群馬県の森林簿を取るか、県の環境森林事務所に照会して確認します。額は小さくても、引けるものは引く。それが申告書の作り方です。
なお、保安林の立木も同じ割合で減額します。土地と立木の両方に効きます。
立木は別に評価する。ただし額は小さい
山林の土地とは別に、生えている木も財産です。杉や檜の人工林は、樹種・樹齢・地域ごとに国税庁が定める標準価額に面積を掛けて評価します。広葉樹の天然林や、植えたまま手入れをしていない山は、さらに低い評価になります。
そして、相続で取得した立木は、評価額の85%で申告できます。相続税法に定めがある減額です。
実務では、立木の評価が大きくなることはほとんどありません。群馬の山の多くは、戦後に植えた杉や檜が伐期を過ぎて放置されている状態で、材木として売れる見込みが薄いからです。それでも申告書には立木の欄がありますので、樹種と樹齢、おおよその面積は聞かせていただきます。森林簿に林齢が載っていますので、それを使います。
筆を全部拾う:名寄帳と森林簿
山林の相続で評価より難しいのは、どこに何筆あるかを確定することです。
固定資産税は、同じ市町村内の土地の評価額合計が30万円未満なら課税されません。山林は評価が安いので、何筆あっても免税点未満で、課税明細書に出てこないことがあります。課税明細書だけで財産を拾うと、山林が丸ごと抜けます。
・名寄帳:市町村役場で取る。亡くなった方名義の土地が、課税の有無にかかわらず全部載る
・森林簿:群馬県の環境森林事務所で取る。林種、林齢、保安林の指定が分かる
・登記簿:法務局。名義が祖父や曽祖父のままの山がないかを確認する
山が複数の市町村にまたがっている方は、市町村ごとに名寄帳を取ります。渋川と前橋、安中と富岡、というように、合併前の境を越えて持っている家は珍しくありません。
名義が祖父のままの山林は、まず相続登記です。2024年4月から義務になり、過去の相続も2027年3月31日までに登記する必要があります。今回の相続税の申告には、祖父名義であっても、亡くなった方が実質的に相続していた分を載せます。
要らない山を手放す:売る、寄付する、国に帰属させる
相続税の話が終わると、次は「この山、要らない」です。選択肢は3つです。
売る。買い手は限られますが、林業事業体や、隣地の所有者、山を趣味で持ちたい人が買うことがあります。価格は相続税評価と同じ水準か、それ以下です。市町村の森林経営管理制度で、市町村が経営を引き受ける仕組みもあります。
寄付する。市町村や隣地所有者に無償で譲る方法です。受け取る側が要らないと言えば成立しませんので、相手次第です。群馬の市町村は、管理の負担が増える山林の寄付をほとんど受けません。隣地の林家が引き取ってくれるケースのほうが現実的です。
国に帰属させる。2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度です。境界が明確で、建物や工作物がなく、担保に入っていない、などの要件を満たせば、負担金を払って国に引き取ってもらえます。森林の負担金は面積に応じて計算し、10町歩なら90万円前後です。申請の手数料は1筆1万4,000円です。山林で引っかかるのは境界です。隣との境が尾根や沢の口約束のままだと、測量から始めることになり、費用が負担金を超えます。
どの方法も時間がかかります。相続税の申告のときに、残す山と手放す山を仕分けしておくと、次の相続が楽になります。農地と山林の評価の基本はこちらの記事に、基礎控除の考え方は相続税はいくらからかかるかに書いています。山林の筆数が多い方は、申告書の作成に時間がかかりますので、早めにご相談ください。
群馬の山林を含む相続税のご相談
たかさき相続税・贈与税相談プラザでは、山林が何筆あっても、どの市町村にあっても、相続税申告を承っています。場所が分からない、名義が祖父のまま、という状態からで構いません。現地の確認が必要なときは、高崎から伺います。
たかさき相続税・贈与税相談プラザ
TEL 027-335-9606(平日9:00〜17:30)
群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル2階
公認会計士・税理士 長島祐太
















