海外在住の相続人がいる場合の署名証明・在留証明|印鑑証明の代わりに何を取るか【群馬・高崎】

「弟がオーストラリアにいます。遺産分割協議書に実印を押してもらわないといけないんですが、向こうには印鑑証明がないと言われました。どうすればいいんでしょう」

海外に住んでいる方は、日本の住民票がありません。住民票がなければ印鑑登録ができず、印鑑証明も出ません。その代わりに使うのが、現地の日本大使館・領事館で発行する署名証明と在留証明です。

この記事では、この2つの書類が何なのか、どちらの形式を取ればいいのか、取得にどれくらいかかるのか、そして相続税の申告期限10か月から逆算してどう動くかを書きます。海外にいるご本人にも、群馬で手続きを進めるご家族にも、両方に読んでいただきたい内容です。

印鑑証明の代わりが「署名証明」、住民票の代わりが「在留証明」

相続の手続きで、海外在住の相続人に求められる書類は主に2つです。

・署名証明(サイン証明):この署名は本人のものだと領事が証明する書類。印鑑証明の代わり

・在留証明:この人は現地のこの住所に住んでいると証明する書類。住民票の代わり

署名証明は、遺産分割協議書に使います。相続税の申告書に遺産分割協議書を添付する際、国内の相続人なら印鑑証明を付けますが、海外在住の相続人は署名証明を付けます。預金の解約や、相続登記でも同じ書類を求められます。

在留証明は、相続登記で住所を証明するために使います。相続税の申告書そのものには必須ではありませんが、登記と一緒に動くのが普通ですから、署名証明と同じタイミングで取っておくのが効率的です。

どちらも、現地の日本大使館または総領事館で発行します。日本の役所では取れません。ここが国内の相続との一番の違いです。

署名証明には2つの形式がある。遺産分割協議書は「綴じる形式」で

署名証明には形式が2つあります。ここを間違えると取り直しになりますので、先に押さえてください。

・形式1(綴り合わせ):遺産分割協議書そのものを領事館に持参し、領事の目の前で署名する。領事館が証明書を協議書に綴じて割印する

・形式2(単独):署名の見本だけを証明する1枚の書類。協議書とは別に発行される

遺産分割協議書には、形式1をお勧めしています。協議書と証明書が一体になるので、法務局や銀行で受け付けてもらえないという事態が起きにくいからです。形式2でも受け付ける窓口はありますが、金融機関によっては断られることがあり、その場合は取り直しです。

形式1を取るには、署名欄が空白の遺産分割協議書の原本を、先に海外へ送る必要があります。つまり、協議書の中身は、海外の相続人が領事館に行く前に確定していなければなりません。順番が逆になると、修正のたびに領事館に行き直すことになります。

なお、署名証明は本人が領事館に出向く必要があります。郵送での申請はできません。本人確認のうえで領事の面前で署名することに意味があるからです。

取得にかかる時間と、よくあるつまずき

書類そのものは、窓口に行けばその場か、数日で発行されます。時間がかかるのは窓口に行くまでです。

・予約が必要な公館が多く、予約枠が数週間先しか空いていないことがある

・領事館が遠い。国によっては飛行機で行く距離になり、仕事を休んで1泊する必要が出る

・在留証明には、その地に3か月以上住んでいることを示す書類(現地の住居契約書や公共料金の請求書など)が必要で、揃えるのに時間がかかる

・日本からの協議書の原本が国際郵便で届くまで、1〜2週間かかる

これらを合わせると、協議書の内容が固まってから署名証明付きの原本が群馬に戻ってくるまで、早くて1か月、遠い国なら2か月を見ておく必要があります。

つまずきで多いのは、パスポートの名前と戸籍の名前の不一致です。結婚で姓が変わった方、現地で通称を使っている方は、戸籍上の氏名で署名証明を取ります。領事館で「どちらの名前で」と聞かれて迷わないよう、戸籍謄本の写しを持参していただくと確実です。

手数料は公館ごとに現地通貨で決まっていて、署名証明・在留証明とも1通あたり数千円相当です。2通ずつ取っておくと、登記と銀行で原本を求められたときに困りません。

10か月から逆算した段取り

相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。海外在住の相続人がいる場合、当事務所では次の順番で進めます。

・1〜3か月目:相続人の確定、財産の調査、評価。海外の相続人には、最寄りの公館と予約の取り方を調べておいてもらう

・4〜5か月目:遺産分割の案を固める。海外の相続人ともオンラインで内容を確認

・6か月目:協議書を確定し、群馬の相続人が先に実印を押す。署名欄を空けた原本を海外へ送る

・7〜8か月目:海外の相続人が領事館で署名証明(形式1)と在留証明を取得し、原本を返送

・9〜10か月目:申告書を提出、納税。相続登記と預金の解約を進める

6か月目に協議書を送れるかどうかが分かれ目です。遺産分割で話がまとまらず、送るのが8か月目になると、返送を待っている間に期限が来ます。その場合は、いったん未分割で申告して、後から修正する方法を取りますが、小規模宅地等の特例などが期限内に使えなくなる不利があります。

海外の相続人の方は、「自分の署名のために全体が遅れる」ことを気にされます。実際には、群馬側の財産調査や評価のほうが時間がかかるのが普通で、署名証明は段取りさえ組めば間に合います。早めに公館の予約状況だけ確認しておいていただければ、それで十分です。

一時帰国できる場合、日本国籍を離れている場合

法要などで一時帰国する予定がある方は、その機会に日本の公証役場で署名認証を受ける方法もあります。領事館に行く手間が省けますし、公証役場は全国にありますので、高崎でも前橋でも対応できます。帰国の日程が分かっていれば、それに合わせて協議書を仕上げます。

一方、現地の国籍を取得して日本国籍を離れている方は、日本の領事館では署名証明を取れません。その場合は、現地の公証人(ノータリー)の認証を受け、日本語の翻訳を付けて使います。公証人の認証にアポスティーユが必要になる国もあります。手順が増えますので、国籍の状況は最初に教えてください。

相続税の納税義務の範囲は、国籍と住所の履歴で変わります。署名証明の話とは別の論点ですが、同じタイミングで確認します。詳しくは海外在住の相続人がいる方へのページにまとめています。

群馬のご家族と海外のご本人、それぞれにお願いすること

海外在住の相続人がいる相続では、役割を分けると早く進みます。

・群馬のご家族:戸籍の収集、通帳や固定資産税の明細の準備、現地の立ち会い、国際郵便の発送

・海外のご本人:公館の予約、署名証明と在留証明の取得、原本の返送、オンライン面談への参加

海外のご本人にお願いするのは、実質この4つだけです。遺産分割の内容を決める場には、オンラインで参加していただきます。「自分だけ蚊帳の外」という状態にはしません。

当事務所では、海外のご本人と群馬のご家族の両方に、同じ資料を同じタイミングでお送りします。やりとりはすべて日本語です。相続税の申告をご自身で進められるかの目安はこちらに書きましたが、海外在住の相続人がいる場合は、署名証明の段取りだけでも専門家が入ったほうが、結果として早く済みます。

海外在住の相続人がいるご家族の相続税申告

たかさき相続税・贈与税相談プラザでは、相続人の一部が海外にお住まいのご家族の相続税申告を承っています。帰国不要、オンラインで完結します。署名証明の段取りは申告期限に直結しますので、亡くなってから3か月以内のご連絡をお勧めします。

・海外在住の相続人がいる方へ(サービス案内)

・お問い合わせフォーム(海外からはこちらが便利です)

たかさき相続税・贈与税相談プラザ

TEL 027-335-9606(平日9:00〜17:30 日本時間)

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公認会計士・税理士 長島祐太