「富岡の実家は、母が亡くなってから誰も住んでいません。相続税は大したことないと思うんですが、この家をどうすればいいのか」
富岡市の実家についてのご相談は、相続税の額よりも、この質問から始まることが多いです。お子さんは高崎や前橋、あるいは東京に出ていて、富岡に戻る予定はない。家は古く、売れるかどうかも分からない。
この記事では、富岡の実家の相続税評価がいくらになるか、同居していなくても特例が使えるか、売るときの税金はどうなるか、持ち続けるとどうなるか、の順に書きます。前提として、相続税そのものは小さく、本当の論点は売るか持つかの判断です。
目次
富岡の実家の相続税評価は、市街地でも400万円台
まず、実家の土地が相続税の計算でいくらになるかです。ここを押さえると、残りの判断が楽になります。
2026年の公示地価で、富岡市の住宅地の平均は1平方メートルあたり3万1,875円です。相続税の路線価はおおむね公示地価の8割ですから、上州富岡駅周辺の市街地で2万5,000円前後と置きます。50坪は165.29平方メートルなので、土地の評価は約413万円です。
建物は固定資産税評価額がそのまま相続税の評価になります。築40年を超えた木造の家なら、100万円から200万円程度に収まるのが普通です。土地と建物を合わせて600万円に届かない、というのが富岡市街地の実家の相場感です。
妙義町や郊外の集落は倍率地域です。固定資産税評価額に倍率を掛けます。たとえば宅地の固定資産税評価額が150万円で倍率が1.1なら、評価は165万円です。この水準になると、実家の土地は相続税の計算上ほとんど効いてきません。
相続税がかかるかどうかは、実家ではなく預金と保険で決まります。基礎控除の考え方は相続税はいくらからかかるかに書いています。
同居していなくても特例が使える「家なき子」
預金が多く、基礎控除を超えそうなご家庭では、実家の土地に小規模宅地等の特例が使えるかが問題になります。使えれば土地の評価が80%減ります。413万円の土地なら約83万円です。
原則は、亡くなった方と同居していた相続人が自宅を相続する場合です。富岡の実家に誰も住んでいなかったなら、この原則には当てはまりません。
ただし、例外があります。いわゆる「家なき子」です。亡くなった方に配偶者も同居の相続人もおらず、相続する子が、相続開始前3年以内に自分や配偶者の持ち家に住んでいなかった場合です。賃貸住まいのお子さんが実家を相続するケースが典型です。
要件は細かく、過去に持っていた家に住んでいる場合や、親族の会社が持つ家に住んでいる場合は使えません。2018年の改正で、3親等内の親族が所有する家に住む人も対象から外れました。使えるかどうかは、相続開始時点の住まいの状況で決まりますので、相続が起きてからでは動かせません。
もう一つ、お母さまが老人ホームに入っていた場合も、要介護認定を受けていて、入所後にその家を貸したりしていなければ、自宅として扱われます。富岡でも、実家は空き家だが名義人はホームにいる、という形は珍しくありません。特例の要件は小規模宅地等の特例の記事にまとめています。
売るなら「空き家の3,000万円控除」を先に確認する
相続税の次に来るのが、売却したときの所得税です。ここで効くのが、相続した空き家を売ったときの3,000万円の特別控除です。
富岡の実家を1,200万円で売ったとします。親御さんが買った値段が分からない場合、取得費は売却額の5%、つまり60万円で計算します。仲介手数料などの費用を40万円とすると、譲渡益は1,100万円です。
特例がなければ、長期譲渡の税率20.315%で約223万円の税金がかかります。特例が使えれば、1,100万円から3,000万円を引いてマイナスですから、税金はゼロです。
要件の主なものは次の通りです。
・1981年5月31日以前に建てられた家(旧耐震)であること
・亡くなった方が一人で住んでいて、相続後は貸したり住んだりしていないこと
・相続開始から3年目の年の12月31日までに売ること
・売却額が1億円以下であること
・家を取り壊して売るか、耐震改修して売ること(2024年以降は、売った翌年2月15日までに買主が取り壊す形でも可)
富岡の古い家は、1981年より前の建物が多く、この特例の対象になりやすいです。一方で、売却期限が相続から3年目の年末という点は、空き家のまま放っておくと簡単に過ぎます。富岡で3年以内に買い手を見つけるには、相続が済んだらすぐに動く必要があります。
注意点が一つあります。相続税を払った方が使える「取得費加算」と、この3,000万円控除は、同じ物件で両方は使えません。どちらが得かは計算して決めます。富岡の実家のように相続税が小さい場合は、3,000万円控除が有利になるのが普通です。取得費加算の仕組みはこちらに書いています。
持ち続けると、固定資産税が上がることがある
売らずに持つ、という選択ももちろんあります。お盆と正月に帰る場所として残したい、仏壇があるので手放しにくい、というお気持ちはよく伺います。妙義町のように買い手が見つかりにくい地域では、売りたくても売れない、という現実もあります。
その場合に知っておいていただきたいのが、固定資産税です。住宅が建っている土地は、固定資産税が最大6分の1に軽減されています。ところが、管理されていない空き家として市から「特定空家」や「管理不全空家」に指定され、勧告を受けると、この軽減が外れます。土地の固定資産税が最大で6倍になります。
富岡の市街地なら、年に数万円の固定資産税が十数万円になる計算です。加えて、草刈りや雨漏りの対応、台風の後の見回り。高崎から車で30分の距離でも、年に何度も通うのは負担です。
持ち続けるなら、誰が管理するか、費用は誰が持つかを、遺産分割のときに決めておくことをお勧めしています。実家を相続した一人だけが負担を抱える形は、後で揉めます。
相続税は富岡税務署、譲渡所得は翌年の確定申告
手続きの順番を整理します。
・相続税の申告:亡くなった日の翌日から10か月以内。申告先は亡くなった方の住所地を管轄する富岡税務署(富岡市・甘楽郡)
・相続登記:2024年4月から義務化。相続を知ってから3年以内
・売却した場合の譲渡所得:売った年の翌年2月16日から3月15日の確定申告。申告先は売った方自身の住所地の税務署
売却のときに3,000万円控除を使うには、富岡市役所で「被相続人居住用家屋等確認書」を取る必要があります。確定申告の時期に慌てないよう、売却が決まった段階で準備を始めます。
相続税の申告が不要でも、売却の申告は必要です。「相続税がかからなかったから何もしなくていい」と思っている方が、売却の翌年に申告を忘れるケースを見ます。ここは別の税金です。
富岡の実家、売るか持つかを数字で決めたい方へ
たかさき相続税・贈与税相談プラザでは、富岡市・甘楽郡の実家について、相続税の評価から、小規模宅地等の特例の可否、売却したときの税額まで、一度に試算します。空き家の3,000万円控除の期限は相続から3年目の年末です。実家を空けたままの方は、早めにご相談ください。
たかさき相続税・贈与税相談プラザ
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公認会計士・税理士 長島祐太
















