「富岡なんて土地は安いですから、相続税は関係ないと思っていました」
富岡市の方からのご相談で、最初に出てくる言葉はたいていこれです。たしかに、富岡の地価は高崎の中心部とは比べものになりません。それでも、相続税の申告が必要になる方は富岡にもいます。理由は土地ではなく、預金です。
この記事では、富岡市の2026年の地価、路線価地域と倍率地域の分かれ方、具体的な試算、そして申告先の税務署まで、富岡市で相続が起きたときに最初に知っておきたいことを一通り書きます。
目次
富岡の相続税は、土地より預金で決まる
相続税がかかるかどうかの境目は、基礎控除です。3,000万円に、法定相続人1人あたり600万円を足した額です。相続人が子2人なら4,200万円、配偶者と子2人なら4,800万円になります。
高崎の駅周辺なら、自宅の土地だけでこの額に近づくことがあります。富岡では、そうはなりません。後で数字を出しますが、富岡の住宅地60坪は、相続税の評価で500万円前後に収まるのが普通です。
では富岡の方は申告と無縁かというと、違います。長く商売をされていた方、製糸や繊維の関係で蓄えのあった家、農地を売った代金がそのまま預金になっている家。こういうご家庭は、預金と保険だけで4,000万円を超えてきます。富岡の相続税は、土地ではなく預金と保険の額で決まります。
そして見落とされやすいのが、土地が安いからこそ、小規模宅地等の特例で税額がゼロになっても申告は必要、という点です。これは後半で書きます。
富岡市の地価の現在地(2026年公示地価)
住宅地3万1,875円、商業地3万7,233円
2026年の公示地価で、富岡市の平均は1平方メートルあたり3万4,171円です。前年比はマイナス1.14%でした。用途別に見ると次の通りです。
・住宅地の平均:3万1,875円(前年比マイナス0.87%)
・商業地の平均:3万7,233円(前年比マイナス1.50%)
・最高地点:富岡字上町1052番10の4万6,100円
・最低地点:妙義町菅原字中宿939番1の5,700円
駅の周辺で見ると、上州富岡駅の周辺が3万6,466円で最も高く、南蛇井駅の周辺が1万2,900円で最も低くなっています。市の中心と西側の集落とで、おおむね3倍の差です。妙義町のエリア平均は6,775円で、ここまで来ると宅地でも1坪2万円台です。
住宅地も商業地も下落が続いています。富岡製糸場が世界遺産になった後の商業地も、上向きにはなっていません。相続税の評価という点では、下落は不利ではありません。
ピークの4分の1
富岡市の公示地価は、1992年の14万400円がピークでした。2026年の3万4,171円は、その4.11分の1です。ピーク時に買った土地は、固定資産税の評価も、相続税の評価も、当時とはまるで違う額になっています。
親御さんが「この土地は高かった」とおっしゃっていても、相続税の計算は今の評価で行います。ここを過大に見積もって、必要のない心配をされている方が少なくありません。
路線価地域と倍率地域が混在する
相続税の土地の評価には、路線価方式と倍率方式があります。富岡市は、両方が混在する市です。
上州富岡駅や東富岡駅の周辺、国道254号沿いの市街地には路線価が付いています。道路ごとに1平方メートルあたりの価格が決まっていて、それに面積を掛けて評価します。
一方、郊外の集落や妙義町の方は倍率地域です。固定資産税評価額に、国税庁が定めた倍率を掛けて評価します。倍率表は国税庁の「財産評価基準書」で地区ごとに確認できます。たとえば宅地の倍率が1.1なら、固定資産税評価額1,000万円の宅地は1,100万円で評価します。
どちらの地域に入るかは住所で決まり、同じ富岡市でも字が違えば方式が変わることがあります。ご自宅がどちらかは、固定資産税の課税明細書と評価基準書を突き合わせれば分かります。
倍率地域の方で注意が必要なのは、山林と農地です。妙義町の山林は面積だけ見れば広大ですが、相続税の評価は1平方メートルあたり数十円から数百円になることが多く、面積の割に評価は小さくなります。逆に、市街地に近い畑は宅地並みの評価になることがあります。農地の評価の仕組みは、別の記事で詳しく書く予定です。
試算:自宅60坪と預金3,500万円の場合
富岡市内の住宅地にある60坪の自宅で試算します。相続人は子2人、親と同居していた子が自宅を相続するとします。
路線価は、公示地価のおおむね8割です。住宅地の平均3万1,875円の8割は2万5,500円ですから、ここでは1平方メートルあたり2万5,000円と置きます。60坪は198.35平方メートルなので、土地の評価は約496万円です。
・土地(自宅60坪):496万円
・建物(固定資産税評価額):250万円
・預金:3,500万円
・畑と山林(倍率地域):150万円
・合計:4,396万円
基礎控除は子2人で4,200万円です。合計4,396万円は、これを196万円超えています。土地は全体の1割強にすぎません。預金が主役です。
この196万円を2人で分け、それぞれに10%の税率を掛けると、相続税は2人合わせて約20万円です。
ここで、同居の子が自宅を相続するので小規模宅地等の特例が使えます。自宅の土地の評価が80%減になり、496万円が約99万円になります。合計は3,999万円に下がり、基礎控除4,200万円を下回ります。税額はゼロです。
ただし、この特例は申告をして初めて使えます。特例を使った結果ゼロになるケースは、申告が必要です。「富岡は土地が安いから」と何もしないでいると、特例なしの4,396万円で判定され、無申告の扱いになります。小規模宅地等の特例の要件はこちらの記事にまとめています。
なお、相続人が配偶者と子2人なら基礎控除は4,800万円です。この例では特例を使わなくても下回り、申告は不要です。相続人が誰かで結論が変わります。基礎控除の数え方は相続税はいくらからかかるかで書いています。
申告先は富岡税務署(富岡市・甘楽郡)
相続税の申告書は、亡くなった方の住所地を管轄する税務署に出します。富岡市にお住まいだった方なら、富岡税務署です。
・富岡税務署:富岡市富岡2741番地の1
・電話:0274-63-2235(自動音声)
・管轄:富岡市、甘楽郡(甘楽町・下仁田町・南牧村)
相続人の住所は関係ありません。相続人が高崎や東京に住んでいても、亡くなった方が富岡市なら富岡税務署です。逆に、相続人が富岡にいて亡くなった方が高崎市なら高崎税務署です。
期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。申告先が富岡税務署で、相談先は高崎の当事務所、という組み合わせで問題ありません。申告書は電子申告で出しますので、税務署に足を運ぶ必要はありません。
富岡の方が、相談の前に揃えておくもの
最初の面談に持ってきていただくと話が早いものを挙げます。
・固定資産税の課税明細書(毎年4月ごろに富岡市から届くもの)
・預金通帳(亡くなった方のものすべて。しののめ信用金庫、群馬銀行、ゆうちょなど)
・生命保険の証券
・農地や山林があれば、登記の名義が分かるもの
課税明細書は、土地が路線価地域か倍率地域かを判断する出発点です。山林や農地が何筆もある方は枚数が多くなりますが、全部お持ちください。
富岡の方の財産構成は、自宅と預金に、畑と山林が付いてくる形が典型です。土地の評価は手間がかかるものの額は小さく、預金の調べ方で結論が決まります。生前の引き出しや、お子さん名義の口座の扱いまで含めて見ることになります。ご自身で申告できるかどうかの目安はこちらに書きました。
高崎の事務所から富岡までは、車で30分ほどです。現地の確認が必要なときは、こちらから伺います。
富岡市の相続税のご相談
たかさき相続税・贈与税相談プラザでは、富岡市・甘楽郡の方の相続税申告を承っています。預金と保険を合わせて4,000万円前後になりそうな方は、申告が必要かどうかの判定だけでも一度ご相談ください。特例で税額がゼロになる場合も、申告が必要かどうかをその場でお伝えします。
たかさき相続税・贈与税相談プラザ
TEL 027-335-9606(平日9:00〜17:30)
群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル2階
公認会計士・税理士 長島祐太
















