相続税の申告要否検討表の書き方|「申告不要」で返して後から困る人の共通点【群馬・高崎】

「この表、埋めてみたら基礎控除より下でした。このまま出していいですよね」

申告要否検討表を書き終えた方から、よくこう聞かれます。私は必ず、先に3つだけ確認させてもらいます。名義預金、手許現金、そして課税明細書に載っていない土地です。この3つで結論がひっくり返る家が、一定数あります。

私は高崎市江木町で相続税の申告を受けている公認会計士・税理士の長島祐太です。この記事では、申告要否検討表をどう埋めるか、そしてどこで間違えるかを書きます。

検討表は財産の棚卸し表

申告要否検討表は、税務署が用意した1枚もののシートです。亡くなった方の情報、相続人の数、財産の種類ごとの金額、債務と葬式費用を書き、合計と基礎控除を比べる構成になっています。

やっていることは、相続税の申告書と同じです。財産を洗い出し、足し、引く。違うのは精度だけで、考え方は変わりません。だから、検討表を正しく書けるなら申告の半分は終わっています。逆に、検討表で漏らした財産は申告でも漏れます。

書く順番は、金額の大きいものからです。土地、建物、預金、有価証券、保険。この5つで、たいていの家は総額の9割が決まります。細かい家財の値付けに時間をかける前に、大物を確定させてください。

国税庁のサイトには、画面の質問に答えると要否を判定してくれる「相続税の申告要否判定コーナー」もあります。手書きが面倒なら、こちらで作ってもかまいません。入力する中身は同じです。

不動産の欄で漏れるもの

多くの方は、固定資産税の課税明細書を見ながら書きます。それで足りることもありますが、足りないことがあります。課税明細書に載るのは、原則として固定資産税がかかっている土地だからです。

固定資産税が免税点未満の小さな土地、公衆用道路として非課税になっている私道。こうした土地は明細書に出てこないのに、相続税では評価の対象になります。手元の1枚だけで判断すると、そのまま漏れます。

確実なのは、市町村の資産税課で名寄帳を取ることです。その市町村にある、亡くなった方名義の不動産が一覧で出ます。高崎市に自宅があり、渋川に山林があるなら、それぞれの市で取る必要があります。他の市町村の分までは出てきません。

もう一つ、他人と共有している土地の持分も財産です。兄弟で相続した実家の土地を共有のままにしているケース、農道や水路に接する部分を近隣と共有しているケース。持分割合を掛けた金額を書きます。

預金の欄で漏れるもの

ここが、税務署が最も見る欄です。書くのは亡くなった日の残高ですが、それだけでは足りません。

名義預金

子や孫の名義になっているが、実際には親が積んで親が管理していた預金。通帳も印鑑も親が持っていて、名義人は存在すら知らない。この形は、名義が誰であれ亡くなった方の財産として扱われます。「子の名義だから関係ない」で外すと、後の調査でいちばん指摘されます。

手許現金

自宅に置いてあった現金も財産です。入院や葬儀に備えて亡くなる直前に引き出した分は、口座の残高には載りませんが、使い切っていなければ残ります。直前に大きな出金があるなら、その行き先を説明できるようにしておいてください。

貸したお金

子や親族に貸していたお金、会社を経営していた方なら会社への貸付金。返ってくる見込みの薄いものでも、債権として残っていれば財産です。会社の決算書に役員借入金として載っていれば、その金額が目安になります。金額が大きくなりやすいのに、真っ先に忘れられる項目です。

忘れている口座

使っていない地方銀行や信用金庫の口座、郵便局の定額貯金、勤務先の社内預金。証券口座では、証券会社の残高に出てこない特別口座に株が残っていることがあります。配当金計算書や取引残高報告書が届いていないか、郵便物を確認してください。

保険・贈与の欄で漏れるもの

死亡保険金は、受取人が指定されていれば受取人のものになります。そのため「相続財産ではない」と考えて書かない方がいますが、相続税では課税対象です。ただし「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。相続人が3人なら1,500万円まで。超えた分だけを書きます。

死亡退職金も同じ構造で、別枠で同額の非課税枠があります。勤務先から支給されていないか確認してください。

生前贈与の欄も要注意です。亡くなる前の一定期間内に贈与を受けていれば、その分を相続財産に足し戻します。この期間は改正で3年から7年へ段階的に延びている最中で、相続が起きた日によって何年分を足すかが変わります。相続時精算課税を使って贈与を受けていた場合は、期間に関係なく全額を足します。

「毎年110万円ずつもらっていたが非課税の範囲だから関係ない」。この理解で書かない方がいます。贈与税がかからなかったことと、相続財産に足し戻さないことは別です。

引ける債務・葬式費用

財産を足すだけでなく、引けるものもあります。ここを埋めないまま「基礎控除を超えた」と判断している方もいます。

・住宅ローンなどの借入金の残高

・亡くなった時点で未払いだった医療費、介護施設の利用料

・未払いの固定資産税、住民税、所得税

・通夜と葬儀の費用、火葬料、お布施(領収書のないお布施も、金額と相手先を記録しておけば対象です)

未払いの医療費は、入院していた方ほど金額が出ます。亡くなった月の請求は翌月に届くので、検討表を書く時点では手元にないこともある。請求書が来る前でも、概算で入れておいて構いません。

一方、引けないものもあります。香典返しの費用、初七日や四十九日の法要費用、墓地や仏壇の購入費用。葬儀に関わる出費でも、区別があります。

なお、墓地や仏壇そのものは相続財産に入れません。ただし、亡くなった後に相続人が購入した分は債務としても引けないので、生前に買っておくかどうかで差が出ます。

判断が割れる帯に入ったら

埋め終わったら、合計と基礎控除を比べます。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。子2人なら4,200万円です。

合計が基礎控除を大きく下回るなら、検討表を返送して終わりです。大きく超えるなら、申告の準備に入ります。困るのは、基礎控除の前後1,000万円くらいに収まったときです。この帯に入ったら、土地の評価を粗い概算のままにしないでください。土地は、評価の仕方で数百万円動きます。

この帯で私が実際に見るのは、自宅の土地です。路線価に面積を掛けただけの数字と、形や道路との関係を見たうえでの数字とでは、結果が変わります。小規模宅地等の特例が使えるかどうかでも、8割減るかどうかが動く。基礎控除の前後にいる家ほど、ここで結論が入れ替わります。

最後に、書き方の注意を一つ。検討表は自己申告の書類です。分からない財産を「ない」と書いて出し、後の調査で見つかった場合、意図的に隠したと判断されれば重加算税の対象になり得ます。分からないものは調べてから書く。これが結局いちばん安全です。

申告が要るかどうかの目安は相続税はいくらからかかるかの記事、自分で申告まで進められるかの判断は自分で相続税申告ができるかの記事、依頼する場合の選び方は相続税に強い税理士の見分け方の記事にまとめています。

書きかけの検討表を、そのまま持ってきてください

埋めた検討表と固定資産税の課税明細書があれば、漏れがないか、基礎控除を超えるかをその場で確認します。返送して終わりでよいのか、申告に進むべきかまでお答えします。公認会計士・税理士 長島祐太が担当します。

たかさき相続税・贈与税相談プラザ(ミノラス会計事務所内)

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