遺産総額の概算の出し方|自分でできる財産評価のステップ【群馬・高崎】

「うちがいくらあるのか、そもそも分からないんです。だから相続税がかかるのかも分からなくて」

ご相談の入口で、いちばん多い言葉です。相続税がかかるかどうかは、遺産の総額と基礎控除を比べれば分かる。仕組みはそれだけなのに、肝心の総額が出せないから前に進めない。

ただ、正確な評価と概算はまったく別の作業です。正確な評価には土地の測量図や現地確認が要りますが、「かかるのか、かからないのか」を見極めるだけなら、手元の書類とインターネットで足ります。半日あれば十分です。

このコラムでは、ご自身で遺産総額の概算を出す手順を、見るべき書類とあわせて順番に書きます。

概算で目指すのは「線を越えるかどうか」だけ

最初に、ゴールをはっきりさせておきます。ここでやるのは、遺産総額が基礎控除を超えそうかどうかの判定です。1円単位で合わせる必要はありません。

基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。相続人が配偶者と子ども2人なら4,800万円、子ども2人だけなら4,200万円。この金額の意味は相続税はいくらからかかるのかに書きました。

概算の結果が基礎控除の8割に届かなければ、まず心配はいりません。逆に、8割を超えてくるなら一度専門家に見てもらったほうがいい。線のすぐ近くにいる家がいちばん危ないからです。

ステップ1|書類を集める

まず、次の書類を探してください。ほとんどはご自宅にあります。

・固定資産税の納税通知書(毎年4月ごろ市役所から届くもの。課税明細が付いています)

・預金通帳、ネット銀行の残高画面

・証券会社の取引残高報告書

・生命保険の保険証券、保険会社からの契約内容のお知らせ

・借入金の返済予定表、住宅ローンの残高証明書

・ゴルフ会員権、車の車検証など

固定資産税の納税通知書が見つからない場合、高崎市役所で名寄帳を取れば、その市内に持っている不動産が一覧で出てきます。他の市町村にも土地がありそうなら、その市町村ごとに取ることになります。親御さんの財産を確認する場合は、先に何をどう聞くかを決めておいたほうがスムーズです。

ステップ2|不動産をざっくり評価する

相続税の世界では、不動産は売買価格ではなく、決められたルールで評価します。概算の段階では、次の考え方で足ります。

建物は、固定資産税評価額をそのまま使います。納税通知書の課税明細に載っている金額です。難しい計算はありません。

土地は、路線価がある地域とない地域で分かれます。高崎の市街地は、たいてい路線価が付いています。国税庁の財産評価基準書のサイトで住所から地図をたどると、道路に「120D」のような数字が振ってあります。この120は1平方メートルあたり12万円という意味です。これに土地の面積を掛けたものが、ごく大まかな評価額になります。

路線価が付いていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けます。倍率も同じサイトで確認できます。郊外や農地はこちらの方式が多くなります。

感覚をつかむために、目安を書いておきます。路線価はおおむね公示価格の8割、固定資産税評価額は7割程度の水準に設定されています。つまり、実際に売れる価格より低い金額で評価されるのが普通です。「うちの土地は坪いくらで売れるはず」という感覚で足すと、実態より高く出ます。

なお、自宅の土地には評価額を8割減らせる小規模宅地等の特例があります。ただし概算の段階では、これを入れずに計算してください。特例は要件を満たして初めて使えるもので、使えるつもりでいて外れたときの差が大きいからです。まずは特例なしで線を越えるかを見る。順番はこれです。

ステップ3|金融資産と保険を足す

預貯金は、残高をそのまま足します。定期預金は経過利息も付きますが、概算では無視して構いません。

上場株式や投資信託は、直近の残高報告書の金額で足しておきます。実際の申告では亡くなった月の平均額なども使って有利な金額を選びますが、概算では現在の評価額で十分です。

生命保険は、受け取ることになる死亡保険金の額を足します。ここには非課税枠があり、500万円×法定相続人の数までは相続税がかかりません。相続人が3人なら1,500万円です。保険金3,000万円なら、差し引き1,500万円を足すことになります。

死亡退職金がある場合も、同じ枠が別に用意されています。会社にお勤めだった方は確認してください。

ステップ4|引けるものを引き、基礎控除と比べる

財産を足し終えたら、次のものを引きます。

・借入金、住宅ローンの残高

・未払いの医療費、未払いの固定資産税や住民税

・葬式費用(通夜・告別式の費用、お布施など。香典返しは引けません)

ここまで出した金額と、基礎控除を比べます。財産の合計から負債と葬式費用を引いた金額が基礎控除以下であれば、相続税はかからず、申告も原則として不要です。

超えていれば、申告が必要になる可能性が高い。金額を出すこと自体は、ここまでの作業でできています。

概算が実際とずれる4つのポイント

ご自身で出した数字が、実際の申告と大きくずれることがあります。私が実務で見てきた原因は、だいたい次の4つです。

ひとつめは、家族名義の預金です。お子さんやお孫さんの名義になっていても、実質的に親御さんのお金であれば、相続財産として扱われます。これが名義預金です。税務調査でいちばん指摘される項目でもあります。概算の段階から、家族名義の口座も一度洗い出してください。

ふたつめは、生前贈与です。亡くなる前の一定期間に受けた贈与は、相続財産に足し戻されます。この期間は3年から7年へ段階的に延びている最中です。毎年110万円ずつ渡してきた家では、この足し戻しで数百万円単位の差が出ます。

みっつめは、土地の形と使い方です。路線価に面積を掛けるだけの計算は、あくまで出発点です。間口が狭い、奥行きが長い、道路より低い、といった事情で評価は下がります。逆に、二つの道路に面していれば上がります。アパートを建てている土地は貸家建付地として下がります。この差は、数百万円になることがあります。

よっつめは、忘れられた不動産です。山林や畑、私道の持分、共有名義の土地。固定資産税がかからない不動産は納税通知書に載らないため、そもそも存在に気づかないことがあります。名寄帳を取ると出てくることが多いので、面倒でも一度確認しておいてください。

数字を一度出しておく意味

概算を出すことの価値は、税額が分かることではありません。分からないまま抱えていた不安が、具体的な数字に変わることです。

基礎控除を大きく下回っていれば、それ以上悩む必要はありません。何もしなくていい、という結論も立派な結論です。超えていれば、そこからは打てる手の話になります。生前贈与も、生命保険の使い方も、分け方の設計も、相続が起きる前だから選べる選択肢です。

私がご相談を受けるときも、最初にやるのはこの概算です。持ってきていただいた納税通知書と通帳を並べて、その場で合計を出す。それだけで、次に何を考えるべきかがはっきりします。

まずは、かかるかどうかを確かめる

書類を集める前に、ざっくり確認したい方はこちらから。いくつかの質問に答えるだけで判定できます。

かんたん相続税診断

相続税のよくあるご質問

固定資産税の納税通知書と通帳をお持ちいただければ、その場で概算をお出しします。高崎市江木町の事務所でお話をうかがいます。

たかさき相続税・贈与税相談プラザ

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公認会計士・税理士 長島祐太