「渋川なんですけど、そちらでも見てもらえますか」
最近、この問い合わせが増えています。渋川、榛東、吉岡。高崎から車で30分ほどの範囲です。
渋川の相続は、高崎とは進め方から違います。渋川市には路線価図がないからです。土地の値段を調べようとして、最初の一歩で止まる方がほとんどです。
渋川の数字と、倍率地域での評価の考え方を書きます。
目次
渋川市に路線価図はありません
相続税で土地を評価する方法は2つあります。道路に価格が付いている地域は路線価方式、付いていない地域は倍率方式です。
渋川市は全域が倍率地域です。市街地も、旧渋川の中心部も、伊香保も、赤城も、路線価は付いていません。
国税庁のサイトで「財産評価基準書」を開き、群馬県を選んで渋川市を探すと、路線価図は出てきません。見るのは評価倍率表のほうです。ここで戸惑って手が止まる方が多い。高崎の記事や一般的な解説を読んで路線価図を探しても、渋川では存在しないものを探していることになります。
倍率方式の計算は単純です。
相続税評価額=固定資産税評価額×倍率
固定資産税評価額は、毎年春に届く固定資産税の課税明細書に載っています。倍率は評価倍率表で、地区と地目ごとに定められています。宅地は1.1倍とされている地域が多いですが、必ず表で確認してください。
つまり渋川では、課税明細書がすべての起点になります。これがないと計算が始まりません。
県全体が34年ぶりに上がった年に、渋川は下がった
2026年の公示地価で、群馬県全体の平均が34年ぶりにプラスへ転じました。高崎の路線価も6年ぶりに上昇しています。
渋川市は、同じ年に0.47%の下落でした。市内の公示地価の平均は1平方メートルあたり35,471円、坪に直すと約11万7,000円です。
高崎と比べます。県内で最も高い路線価は高崎市八島町の1平方メートル47万円。渋川市内の公示地価の最高地点は渋川字長塚の57,300円です。8倍以上の開きがあります。
そして渋川市内でも差は大きい。最高地点の57,300円に対し、最も低い村上地区は7,150円。市内だけで8倍の幅があります。「渋川の相場」という一つの数字は存在しません。
倍率方式で、自宅を計算してみる
相続税がかかるかどうかの基準は基礎控除です。3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続人が2人なら4,200万円、3人なら4,800万円です。
渋川の平均的な住宅地に60坪の自宅がある家で置いてみます。固定資産税評価額は公示地価のおおむね7割が目安ですので、1平方メートルあたり約24,800円とします。
60坪=198.35平方メートル
固定資産税評価額=約493万円
×倍率1.1=542万円
ここに建物300万円、預貯金2,000万円を足して2,842万円。相続人が2人でも基礎控除4,200万円に届きません。申告は不要です。
渋川で「自宅と預金だけ」という家の多くは、この位置にいます。相続税はいくらからかかるのかの全国的な話より、実際にはずっと手前で終わります。
ついでに言うと、自宅の土地を8割下げる小規模宅地等の特例も、渋川ではそれほど効きません。542万円の8割は434万円です。高崎の駅近くで土地が3,000万円ある家なら2,400万円が消えるのとは、意味合いが違います。渋川で効くのは自宅の特例ではありません。
渋川で超える家は、土地の「種類」が理由
では、渋川で申告が必要になるのはどういう家か。高崎は「駅に近い」で超えます。渋川は、持っている土地の種類で超えます。
畑
農地は4つに分かれます。純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地。どれに当たるかは評価倍率表に記号で示されていて、そこで金額が桁で変わります。
純農地なら固定資産税評価額に倍率を掛けるだけで、面積のわりに小さな額で収まります。ところが市街地農地と判定されると、宅地だとした場合の価額から造成費を引いて評価します。事実上の宅地並みです。
1,000平方メートル、およそ300坪の畑で計算します。宅地並みに評価すると約2,731万円。造成費を1平方メートルあたり800円として80万円を引き、2,651万円。先ほどの自宅と預金2,842万円に足すと5,493万円で、基礎控除4,800万円を超えます。
耕作をやめて何年も経つ畑が、申告の要否をひっくり返します。
山林
赤城山の西麓、子持、小野上。渋川には山林を持つ家が多くあります。山林も純山林、中間山林、市街地山林の3つに分かれ、考え方は農地と同じです。市街地山林と判定されれば宅地並みの評価になります。
面積が大きいので、区分の判定を誤ったときの影響も大きくなります。農地・山林の相続は、まず区分の確認からです。
伊香保の土地、貸している建物
伊香保温泉を抱えているのも渋川の特徴です。旅館や店舗の敷地、かつての別荘地、貸している駐車場。貸家建付地として評価は下がる一方、棟数と面積が増えるぶん、合計では基礎控除を超えることが多くなります。
倍率地域は、差がつくポイントが違う
ここは正確に書きます。
路線価地域なら、間口が狭い、奥行きが長い、形がいびつ、といった事情で補正をかけて評価を下げます。倍率地域では、これができません。固定資産税評価額を出す段階で、市町村がすでにその要素を織り込んでいるからです。同じ補正を二度かけることになるため、重ねての減額は原則としてしません。
では渋川では誰がやっても同じ金額になるのかというと、そうではありません。差がつく場所が移るだけです。
現況と課税地目のずれ。登記も課税も畑のままだが、実際は宅地として使っている。あるいはその逆
農地・山林の区分判定。純農地か市街地農地かで金額が桁で変わる
宅地比準で引く造成費。傾斜地なら平坦地より大きく引ける
地積規模の大きな宅地の評価。三大都市圏以外は1,000平方メートル以上が対象で、倍率地域でも適用できる
最後の項目は見落とされます。渋川で1,000平方メートル、300坪を超える敷地は珍しくありません。要件を満たせば規模格差補正率で大きく下がりますが、倍率地域では適用できないと思い込んでいる例があります。
出発点である固定資産税評価額そのものが実態と合っていないこともあります。分筆後の面積が反映されていない、地目が古いままになっている。掛ける前の数字が違えば、結果も違います。土地の評価は税理士によって変わりますが、渋川で変わるのはこういう部分です。
高崎の事務所に頼むということ
正直に書きます。当事務所は高崎市江木町にあります。渋川市内ではありません。
渋川市役所から車でおよそ30分、渋川駅からでも同じくらいです。初回のご相談はオンラインでも承りますので、まず状況をうかがったうえで、お越しいただくかどうかを決めていただけます。
畑や山林の現況確認には、こちらから伺います。倍率地域では、現地を見ないと地目の判定も造成費も決められません。そのための移動は業務のうちです。
なお、計算した結果「申告は不要です」で終わることもあります。それで構いません。渋川では、判定だけで済む家のほうが多いはずです。
渋川市・榛東村・吉岡町の方へ
畑や山林をお持ちで、申告が必要かどうか分からない。まずその判定からで結構です。固定資産税の課税明細書をお手元にご用意いただければ、おおよその見当をお伝えできます。渋川は倍率地域ですので、この1枚があれば話が進みます。初回はオンラインでも承ります。
たかさき相続税・贈与税相談プラザ
TEL 027-335-9606(平日9:00〜17:30)
群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル2階
公認会計士・税理士 長島祐太
















