「自宅の横の畑は、ずっと野菜を作ってきた畑です。宅地じゃないのに、宅地と同じ値段になるんですか」
前橋の相続で、この質問はよく出ます。答えは、畑が市街化区域の中にあれば、ほぼ宅地と同じ土俵で評価される、です。見た目も使い方も畑なのに、相続税では「宅地にしたらいくらか」から計算が始まります。
私は高崎市江木町で相続税の申告を受けている公認会計士・税理士の長島祐太です。この記事では、前橋の市街化区域にある畑がなぜ高く評価されるのか、そしてどこで評価を下げられるのかを書きます。
この記事の内容
市街化区域の畑は「宅地だったら」で評価する
都市計画では、市街地として整備していく区域を市街化区域、市街化を抑える区域を市街化調整区域と呼んで分けています。市街化区域の中の畑は、いつ宅地に変わってもおかしくない土地として扱われます。農地法の転用も届出だけで済みます。
そのため相続税では、市街化区域の畑は市街地農地として、宅地比準方式で評価します。計算の式は次のとおりです。
(その畑が宅地だった場合の1㎡の価額 − 1㎡あたりの造成費)× 面積
一方、同じ前橋市内でも、市街化調整区域の農業振興地域にある畑なら、純農地として固定資産税評価額に倍率を掛けるだけです。農地の固定資産税評価額はもともと非常に低いので、評価額も小さく収まります。線一本の内側か外側かで、同じ畑の評価の桁が変わります。
自分の畑が市街化区域か確かめる
まず、畑がどちらの区域にあるかを確かめます。方法は2つあります。
一つは、前橋市の都市計画図です。市のウェブ地図や都市計画の担当窓口で、地番を伝えれば区域と用途地域が分かります。もう一つは、国税庁の財産評価基準書です。市街化区域の畑は、路線価地域なら路線価を使い、倍率地域なら評価倍率表の田・畑の欄に「比準」「市比準」と書かれています。
境目の近くにある畑は、一筆の中で区域がまたがることもあります。その場合は、区域ごとに面積を分けて評価します。自宅の横に何筆も畑がある家は、一筆ずつ確かめてください。
なお、市街化区域の中でも、生産緑地に指定されている農地は評価の扱いが変わります。生産緑地は三大都市圏を中心とした制度です。前橋の畑が指定されているかどうかは、市の都市計画の担当で確認できます。
300㎡の畑で計算する
自宅の横に300㎡の畑がある場合で計算します。前面の路線価は4万円、造成費は1㎡1,000円と置きます。数字は説明用の仮置きです。
(4万円 − 1,000円)× 300㎡ = 1,170万円
同じ300㎡の畑が市街化調整区域の純農地で、固定資産税評価額が2.4万円、倍率が20倍なら、48万円です。約24倍の差になります。
1,170万円は、自宅の土地より高くなることもある金額です。自宅だけなら基礎控除に届かない家が、この畑を足すと申告が必要になる。前橋の相続で申告が必要になる理由のうち、かなりの部分がこの形です。
しかも、この畑には小規模宅地等の特例が使えません。特例の対象は、亡くなった方が住んでいた家の敷地や事業に使っていた土地です。自宅の庭先に続いている畑でも、畑として使っていれば住まいの敷地には入りません。自宅の土地が8割下がっても、畑は下がらないのです。
逆に、畑と呼んでいても、実際には自宅の庭の一角で家庭菜園をしている程度なら、現況は宅地の一部として扱えることがあります。その場合は自宅の敷地に含めて、小規模宅地等の特例の対象になり得ます。畑か庭かは、面積や使い方、敷地との区切りを見て判断します。
造成費を積み上げる
宅地比準で下げられる最初の箇所が、造成費です。国税庁が関東信越国税局の管内向けに毎年定めている金額表から、必要な項目を積み上げて引きます。
・整地費:畑を平らにならす費用。ほぼすべての畑で引けます
・土盛費:道路より低い畑に土を入れる費用。低さに応じて増えます
・土止費:盛った土を留める擁壁の費用。道路に面した長さで決まります
・地盤改良費:湿った田など、地盤が弱い場合
整地費だけで済ませた評価をよく見ます。けれども、畑は道路より低いことが多く、田はさらに低いことが多い。現地で道路との高低差を測り、土盛と土止を加えるだけで、1㎡あたりの造成費が何倍にもなることがあります。300㎡なら、その差がそのまま数十万円、広い畑なら数百万円になります。
もう一つ、道路との位置関係も見ます。自宅の奥にあって道路に面していない畑は、宅地にしても道路に出られません。この場合は、無道路地として評価を下げられます。通路を設けるのに必要な部分の価額を差し引く考え方で、奥まった畑ほど効きます。宅地だったらいくらか、という出発点そのものを、畑の形と場所に合わせて下げていくわけです。
広い畑は地積規模の大きな宅地で下げる
市街化区域の広い畑には、もう一つ大きく効く規定があります。地積規模の大きな宅地の評価です。宅地比準で評価する畑にも使えます。
広い土地を宅地として売るには、道路を通して区画を分ける必要があり、その分だけ売れる面積が減ります。この事情を「規模格差補正率」という係数で評価に反映します。群馬は三大都市圏以外なので、1,000㎡以上が対象です。
1,200㎡の畑で計算すると、補正率は0.78です。路線価4万円、造成費1㎡1,000円と置いて比べます。
補正なし:(4万円 − 1,000円)× 1,200㎡ = 4,680万円
補正あり:(4万円 × 0.78 − 1,000円)× 1,200㎡ = 3,624万円
差は1,056万円です。規定を知っているかどうかだけで、この金額が動きます。ただし、工業専用地域でないこと、容積率、路線価図の地区区分など、使える条件があります。用途地域を確かめてから判断してください。
農業を続けるか、手放すか
評価額が高く出た畑をどうするかは、相続人が農業を続けるかどうかで分かれます。
続けるなら、農地にかかる相続税の納税を猶予してもらう制度があります。前橋は三大都市圏の特定市に当たらないので、市街化区域の畑も対象になり得ます。一方で、途中で農業をやめたり畑を売ったりすると、猶予された税額と利子税を納めることになります。後継ぎの見通しと合わせて判断が必要です。
どちらにするかは、申告期限までに決めておくのが理想です。納税猶予は期限内の申告で手続きする必要があり、後から「やはり続けます」とは言えません。相続人の誰が畑を相続し、その人が実際に耕せるのか。遺産分割の話し合いの段階で詰めておいてください。
手放すなら、宅地として売るか、アパートなどを建てて貸すかです。市街化区域の畑は宅地としての需要があるから高く評価されているので、売ること自体は難しくありません。売るときの税金は、相続から3年10か月以内なら、払った相続税の一部を取得費に足せる特例があります。
申告が要るかどうかの目安は相続税はいくらからかかるかの記事、売るときの税金は相続した不動産を売るときの税金の記事、依頼先の選び方は相続税に強い税理士の見分け方の記事に書いています。
畑の地番が分かれば、区域と評価の方法をその場で確かめます
名寄帳か固定資産税の課税明細書があれば、畑が市街化区域かどうか、造成費や地積規模の大きな宅地でどこまで下げられそうかを整理します。現地の高低差の確認までお受けします。公認会計士・税理士 長島祐太が担当します。
たかさき相続税・贈与税相談プラザ(ミノラス会計事務所内)
群馬県高崎市江木町610-10 ミノラスビル2階
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