相続した不動産・株を売るときの税金|取得費加算の特例【群馬・高崎】

「実家、誰も住まないので売ろうと思うんです。相続税は払ったので、もう税金はかかりませんよね」

かかります。しかも、けっこうな額になります。

相続税と、売ったときの税金は別ものです。相続で財産をもらったときに相続税、それを売って現金にしたときに譲渡所得の税金。二段構えになっています。

ただ、二重取りにならないよう調整する仕組みがあります。使える期限が決まっているので、売る前に知っておいてください。

売ったときの税金は20.315%

売却で利益が出ると、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。

利益の計算は単純です。売った金額から、買ったときの金額(取得費)と、仲介手数料などの譲渡費用を引きます。この残りに税率をかけます。

税率は所有期間で変わります。売った年の1月1日時点で5年を超えていれば長期譲渡所得で20.315%、5年以下なら短期譲渡所得で39.63%です。

相続の場合、所有期間は亡くなった方が買った日から数えます。相続してすぐ売っても、親が30年前に買った家なら長期です。ここは安心してください。

逆に言えば、親が数年前に買ったばかりの物件を相続してすぐ売ると、短期の税率になることがあります。税率が倍近く違いますので、売り時を1年ずらすだけで手取りが変わる場合もあります。

取得費が分からないと、売値の5%で計算される

問題は取得費です。親が買ったときの金額を引き継ぐのですが、その資料が出てこないことが非常に多いです。

分からない場合は、売った金額の5%を取得費とみなして計算します。5,000万円で売ったなら取得費は250万円。つまり売却額のほぼ全部が利益として課税されます。

ですから、まず売買契約書を探してください。権利証と一緒に保管されていることが多いです。見つからなくても、当時の住宅ローンの金銭消費貸借契約書、通帳の出金記録、購入時のパンフレットなどから取得費を認めてもらえる場合があります。諦める前に、家中の書類を集めてください。

契約書が見つかった場合も、そのままの金額を使うわけではありません。土地と建物に分け、建物は経過年数に応じた減価償却相当額を差し引きます。古い家ほど建物部分の取得費は小さくなり、木造で築40年を超えていればほぼ残りません。契約書に土地と建物の内訳が書かれていないときは、消費税額から逆算するなどして按分します。

取得費加算の特例|期限は3年10か月

相続税を払った財産を売るとき、払った相続税のうち、その財産に対応する部分を取得費に足せます。これが取得費加算の特例です。

計算はこうです。

加算額=その人が納めた相続税額×売った財産の相続税評価額÷その人の相続税の課税価格

相続税を1,000万円納めた方が、評価額4,000万円の土地を売ったとします。その方の課税価格が8,000万円なら、加算額は500万円です。

この土地を5,000万円で売り、取得費が分からず概算の250万円、譲渡費用200万円だとすると、譲渡所得は4,550万円。税額は924万円です。ここに500万円を加算すると譲渡所得は4,050万円になり、税額は823万円。約102万円下がります。

使える期限は、相続税の申告期限の翌日から3年以内です。相続開始から数えると3年10か月。この日を1日でも過ぎると使えません。

売り急ぐ必要はありませんが、遺産分割が長引いて期限が迫るケースはよくあります。納税資金のために売るつもりなら、先に延納を申請して時間を作るという順番も検討できます。

空き家の3,000万円控除とは、どちらか一方

親の家を売る場合、もう一つ使える可能性があるのが空き家の3,000万円特別控除です。要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を引けます。

重要なのは、取得費加算の特例とは併用できないことです。同じ不動産について、どちらか一方を選びます。

先ほどの例で比べます。譲渡所得4,550万円に対して、取得費加算なら税額823万円。空き家控除なら3,000万円を引いて1,550万円が課税対象となり、税額は315万円です。差は約508万円。この場合は空き家控除が圧勝です。

加算される相続税額が3,000万円を超えるような大型の相続でなければ、空き家控除のほうが有利になることがほとんどです。ただし空き家控除は要件が細かく、昭和56年5月31日以前の建築であること、売却代金が1億円以下であること、耐震改修か取り壊しが必要なことなど、条件を一つでも外すと使えません。詳しくは空き家の3,000万円控除に書いています。

実際には、空き家控除が使えるか先に判定し、使えないなら取得費加算、という順番で検討します。

なお、併用できないのは取得費加算との関係だけです。相続税の計算で小規模宅地等の特例を使っていても、空き家控除は使えます。ただし小規模宅地の特例は「相続開始前に被相続人と同居していた」あるいは「事業や貸付に使っていた」といった状況が前提になることが多く、空き家控除は逆に「相続開始の直前に一人暮らしだった」ことが前提です。両方の要件を同時に満たす場面はそう多くありません。

期限は2つある。制度自体にも終わりがある

ここが見落とされます。期限が二重にかかっています。

取得費加算=相続開始から3年10か月以内の売却

空き家控除=相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで

空き家控除の制度自体=令和9年12月31日までの売却

たとえば相続開始が令和6年8月なら、空き家控除の個別の期限は令和9年12月31日です。ぎりぎり間に合いますが、令和7年に相続が起きた家は、個別の期限が令和10年末でも、制度の期限のほうが先に来ます。相続が新しい家ほど、実質的に使える期間が短くなります。

以前、実家を売るかどうか3年近く迷われていたご家族がいました。買い手が見つかったのが期限の2か月前で、契約から決済まで急いで進めました。売る意思が固まったのが遅かったわけではなく、兄弟の話し合いに時間がかかっただけです。分割が長引きそうなときは、期限から逆算して動いてください。

株を売る場合も同じ特例が使える

取得費加算は不動産だけの制度ではありません。相続した上場株式や投資信託を売るときにも使えます。期限も同じ3年10か月です。

株の取得費も、亡くなった方が買ったときの金額を引き継ぎます。不明なら売却代金の5%です。名義変更の手続きをするときに、証券会社へ取得価額の記録が残っていないか確認しておくと、後で慌てません。

なお、取得費加算を使うには確定申告が必要です。特例は黙っていて適用されるものではありません。売った翌年の3月15日までに申告してください。

もう一つ、忘れられがちなことがあります。譲渡所得は、売った翌年の住民税や、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料の計算にも影響します。年金生活の方が実家を売った翌年に保険料が跳ね上がって驚かれることがあります。医療費の窓口負担割合が変わる場合もあります。税額だけでなく、翌年の手取りまで見て売却の時期を決めてください。

売る前に、一度計算させてください

どちらの特例が有利かは、相続税をいくら納めたか、建物がいつ建ったか、売却額がいくらになるかで変わります。売った後では選び直せません。買い手を探し始める前に相談いただくのがいちばんです。相続税の申告をよそで済ませた方でも承ります。

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