相続税に強い税理士の見分け方|年間申告件数を聞くべき理由【群馬・高崎】

「今の顧問の先生にお願いしようと思うんですけど、大丈夫でしょうか」

これも、よく受ける質問です。20年以上会社の税務をみてもらっている先生がいて、悪い印象は何もない。ただ、相続の話になったときだけ、なぜか少し不安になる。

その不安には根拠があります。相続税の申告は、税理士にとって珍しい仕事だからです。数字で見ると、はっきりします。

同業の話なので書きにくいところもありますが、依頼する側が損をしないために、聞くべき質問と、その答えの読み方を書きます。

税理士1人あたり、相続税の申告は年1.7件

まず、全体の数字を置きます。

全国の税理士登録者数=82,310人(2026年7月末、日本税理士会連合会)

令和6年分の相続税の申告書提出に係る被相続人数=166,730人(国税庁)

相続税申告の税理士関与割合=86.3%(令和5年度、国税庁実績評価書)

166,730件のうち税理士が関与したのは、およそ143,900件。これを82,310人で割ると、税理士1人あたり年間1.7件です。全件を全員で割っても2件です。

法人税の申告は毎月の顧問業務の延長にありますし、所得税の確定申告は3月に大量に処理します。相続税だけが、そうではありません。年に1件か2件。何年もゼロという税理士も、普通にいます。

群馬県を含む関東信越税理士会の登録者は7,699人(2026年5月末)。この人数で群馬・栃木・茨城・埼玉・新潟・長野の申告を分け合っています。1人あたりの水準は全国と変わりません。

これは能力の話ではありません。仕事の構造の話です。会社の税務に強い先生と、相続の申告を数多く手がけている先生は、そもそも見ているものが違います。相続を年に1件しか扱わなければ、前回の申告から次まで1年空きます。その間に評価通達の運用も、実務の相場観も動きます。

だから「年間何件やっていますか」と聞く

依頼する前に聞くべき質問は、これ一つで足ります。

「相続税の申告は、年間で何件くらい担当されていますか」

聞きにくいと思われるかもしれませんが、失礼な質問ではありません。むしろ、この質問に慣れている先生ほど、相続を数多くやっています。

見るべきは、答えの中身より、答え方です。数をこなしている税理士は即答します。件数を把握していますし、聞かれ慣れているからです。

一方、「たまにありますね」「まあ、それなりに」という返し方をされたときは、法人の顧問が業務の中心だという意味に受け取っていいです。それが悪いのではなく、そういう事務所だというだけです。ただ、依頼する側はそれを知ったうえで決めるべきだと思います。

もう一つ、あわせて聞いておくといいのが「私の申告は、どなたが担当されますか」です。事務所全体の件数と、実際に手を動かす担当者の件数は、別物です。規模の大きい事務所ほどここが分かれます。最初に会った先生がそのまま最後まで見るのか、途中から担当者に引き継がれるのか。どちらでも構いませんが、先に知っておくと後で困りません。

件数の次に聞くべき3つの質問

1.土地は、誰が現地を見て評価しますか

相続税の評価で差がつくのは土地です。そして土地の減額要因は、路線価図とパソコンの上だけでは見つかりません。道路との高低差、間口の狭さ、傾斜、線路や高圧線、隣地との境界。現地に立たないと分からないものばかりです。「現地は見ません」という答えなら、それはそういう申告になります。

2.書面添付は付けますか

税理士法33条の2の書面添付です。何をどう確認して申告書を作ったかを、税理士が書面にして添付する制度です。これが付いていると、税務署は調査に入る前に、まず税理士に意見を聴く手続きを踏みます。

令和4事務年度の相続税の書面添付割合は23.4%。4件に1件も付いていません。手間がかかるからです。付けるかどうかを聞けば、その事務所がどこまでやる方針かが分かります。

3.二次相続まで試算しますか

今回の相続だけを見れば、配偶者にすべて相続させるのがいちばん税額が下がります。配偶者の税額軽減があるからです。ところが、次にその配偶者が亡くなったときに、まとめて戻ってきます。1億2,000万円くらいの財産でも、分け方を変えるだけで合計の税額が数百万円変わります。

この試算を出してくるかどうかは、経験の量がそのまま出ます。

顧問税理士に頼んでいい場合、そうでない場合

誤解のないように書いておきます。顧問の先生に頼むのが常に不利、ということではありません。

財産が自宅と預貯金だけで、相続人の間で揉めていないなら、申告の難易度は高くありません。長年の付き合いで家族の事情を分かっている先生に頼むほうが、話が早いこともあります。自分で申告できるかを検討する余地すらあります。

迷わず専門にしている事務所を探したほうがいいのは、次のような場合です。

土地が複数ある、または広い土地や形の悪い土地がある

貸家やアパート、駐車場を持っている

非上場の自社株がある

遺産分割の話し合いがまとまっていない

名義預金になりそうな口座に心当たりがある

高崎で言えば、駅の徒歩圏に土地がある家や、市街化区域に農地がある家は、まず前者に当たります。

差が出るのは、結局のところ土地です

セカンドオピニオンで、他の事務所が作った申告書を見せていただくことがあります。計算そのものが間違っている、というケースは、ほとんどありません。皆さん、きちんと作っています。

差が出るのは、拾えたはずの減額を拾っていない部分です。以前、申告後に相談に来られた方の土地を見に行ったところ、道路から1メートル以上高い位置にある宅地で、擁壁も古いままでした。申告書ではその補正が入っていませんでした。

こういうものは、税務署は教えてくれません。多く払っていても、指摘されずに終わります。土地の評価は税理士によって変わると言われるのは、この非対称があるからです。

逆方向でも同じことが起きます。令和6事務年度の相続税の実地調査は9,512件で、そのうち申告漏れなどが見つかったのは7,826件。8割を超えます。1件あたりの追徴税額は867万円でした。調査に選ばれる申告書と、そうでない申告書があるということです。名義預金や生前の引き出しをどこまで詰めておくかは、経験の量で差が出ます。

申告期限から5年以内であれば、更正の請求で取り戻せる場合があります。もう出してしまった方も、諦める前に一度見せてください。土地の評価は、後から直せる数少ない部分です。

断りにくい、という相談も多いです

「先生に悪くて言い出せない」。これも本当によく聞きます。

実際のところ、相続の申告だけ他の事務所に頼むのは、業界では普通のことです。断られて気を悪くする先生は、私の知る限りほとんどいません。むしろ「専門のところに出したほうがいい」と勧める先生のほうが多いです。会社の顧問はそのまま続けて、相続の申告だけ別に頼む。それで何の問題もありません。

言いにくければ、「家族で相談して、相続専門のところに見てもらうことにしました」で十分です。理由の説明は要りません。

年間の件数、聞いてください

この記事に書いた質問は、そのまま私にも向けてください。件数も、土地を誰が見に行くかも、書面添付の方針も、聞かれればその場でお答えします。他の事務所と比べたうえで決めていただいてかまいません。

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公認会計士・税理士 長島祐太