「土地の値段なら分かりますよ。固定資産税の通知書に書いてある金額でしょう」
ご相談の席で、納税通知書を広げながらそうおっしゃる方がいます。惜しいところまで来ているのですが、その金額は相続税の計算には使いません。建物は使います。土地は使いません。
土地には、目的の違う価格がいくつも存在します。この違いを知らないまま計算すると、実際の評価額と2割も3割もずれます。遺産総額が基礎控除の近くにある家では、その差がそのまま「申告が必要かどうか」を分けます。
このコラムでは、ご自宅の相続税評価額をご自身で調べる手順と、固定資産税評価額との違いを書きます。
目次
同じ土地に、4つの価格がある
日本の土地には、用途の違う価格が4種類あります。一物四価と呼ばれます。
実勢価格 実際に売買される価格。買い手がいて初めて決まります
公示価格 国土交通省が毎年1月1日時点で公表する標準的な価格。取引の指標です
相続税路線価 相続税・贈与税の計算に使う価格。公示価格のおおむね8割の水準
固定資産税評価額 固定資産税や登録免許税に使う価格。公示価格のおおむね7割の水準
相続税で使うのは3番目です。固定資産税評価額とは、そもそも作っている役所が違います。路線価は国税庁が毎年見直して7月ごろに公表し、その年の1月1日時点の価額として使います。固定資産税評価額は市町村が3年に一度評価替えをします。
水準が8割と7割ですから、固定資産税評価額をそのまま土地の相続税評価額として使うと、1割強も低く見積もることになります。この差は、そのまま計算違いになります。
建物は、固定資産税評価額をそのまま使う
土地の話が続きましたが、建物は簡単です。固定資産税評価額に1.0を掛ける、つまりそのままの金額が相続税評価額になります。納税通知書の課税明細に載っている家屋の評価額を、そのまま書き写せば終わりです。
注意点が2つあります。ひとつは、登記していない建物です。物置や増築部分が未登記のまま残っていることがあります。固定資産税は課税されているので課税明細には載りますが、登記簿には出てきません。
もうひとつは、賃貸に出している建物です。人に貸している家屋は、借家権割合の分だけ評価が下がります。アパートや貸家をお持ちの方は、自宅と分けて考えてください。
土地① 路線価図の調べ方と読み方
路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で誰でも見られます。年分を選び、群馬県、路線価図、市区町村、地区名とたどっていくと、地図が出てきます。高崎市の市街地であれば、ほとんどの道路に数字が振られています。
道路に「120D」のように書かれているのが路線価です。読み方はこうです。
・数字の120は、千円単位。1平方メートルあたり12万円という意味です
・末尾のアルファベットは借地権割合。Aが90%、Bが80%、Cが70%、Dが60%と続きます。ご自身の土地であれば、まずは気にしなくて構いません
この12万円に、土地の面積を掛けます。面積は登記事項証明書か、固定資産税の納税通知書の課税明細に載っています。200平方メートルなら、12万円×200=2,400万円。これが出発点の金額です。
ここで一つ注意があります。登記簿の面積と実際の面積が違うことは珍しくありません。特に古くからお持ちの土地では、測ってみたら登記より広かった、ということが起こります。相続税では実際の面積で評価するのが原則です。
土地② 路線価がない地域は倍率方式
道路に数字が振られていない地域もあります。その場合は倍率方式です。同じサイトの評価倍率表で、市町村と地域を探すと、宅地・田・畑・山林ごとに倍率が載っています。
計算は単純で、固定資産税評価額に、その倍率を掛けるだけです。宅地なら1.1倍というように書かれています。高崎市でも、郊外の集落や農地、山林は倍率地域になっていることが多くあります。
ここでいう固定資産税評価額は、納税通知書に載っている金額です。ただし、住宅用地の軽減が適用されたあとの「課税標準額」ではなく、その前の「評価額」を使います。通知書には両方の数字が並んでいるので、取り違えないでください。ここを間違えると、評価額が半分近く小さく出ます。
掛け算で出た数字は、出発点にすぎない
路線価×面積、あるいは固定資産税評価額×倍率。ここまでは誰が計算しても同じ数字になります。実際の申告では、ここから土地の個別事情を反映させていきます。
評価が下がる方向に働く事情には、次のようなものがあります。
・奥行きが極端に長い、または短い
・間口が狭い
・三角形や旗竿地など、形がいびつ
・道路に接していない
・道路より高い、または低い。がけ地がある
・建て替えの際に道路として提供が必要(セットバック)
・面積が広い(群馬では1,000平方メートル以上が目安)
・アパートや貸家を建てている(貸家建付地)
逆に、角地や二つの道路に面している土地は評価が上がります。
これらの補正は、現地を見て、公図や測量図を確認しながら判断していく作業です。机の上で路線価を掛けるだけでは出てきません。そして、ここを丁寧にやるかどうかで税額が数百万円変わることがあります。土地の評価が「税理士によって差が出る」と言われるのは、この部分を指しています。
特例は、いちばん最後にかかる
ここまでで出した評価額に対して、最後に小規模宅地等の特例が適用されます。自宅の土地なら、330平方メートルまでの部分について評価額が8割減ります。
順番が大事です。評価を丁寧にやって元の金額を下げておけば、そのあとに8割減がかかります。土台が下がれば、特例後の金額もさらに下がる。逆に、ざっくり評価したまま特例を当てても、下がりきりません。
そして、特例には要件があります。誰が取得するか、同居していたか、持ち家があるか。要件を満たさなければ8割減は使えません。ご自宅の評価額を調べたら、次はこの要件を確認してください。
自分で調べたうえで、相談に来てほしい
ここまで書いておいて言うのも変ですが、ご自宅の評価額をご自身で完璧に出す必要はありません。路線価に面積を掛けるところまでで十分です。そこまで出せていれば、遺産総額が基礎控除を超えそうかどうかは判断できます。相続税がいくらからかかるのかと突き合わせてみてください。
そのうえで、補正が効きそうな土地かどうかは、ご自身で見当がつくはずです。形がいびつだ、間口が狭い、道路より低い。住んでいる方がいちばんよく知っています。そういう土地をお持ちなら、専門家に見てもらう価値があります。
申告をご自身でやるかどうかの判断材料は相続税の申告は自分でできるのかに書きました。財産が預金だけの家と、形のある土地を持つ家とでは、判断が変わります。
ご自宅の評価が気になる方へ
まずは相続税がかかりそうかどうかから確認したい方は、こちらをどうぞ。
固定資産税の納税通知書をお持ちいただければ、その場で土地と建物の概算をお出しします。高崎市江木町の事務所でお話をうかがいます。
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公認会計士・税理士 長島祐太
















