「うちはそんなに財産がないので、相続税は関係ないと思うんです」
相続のご相談をお受けしていると、最初にこう言われることがよくあります。そして財産の中身をうかがっていくと、申告が必要だと分かる。この順番になることが、決して珍しくありません。
「うちは大丈夫」と思っている方が危ないのは、財産が少ないからではありません。判断の根拠が、古い基準か、あるいは間違った物差しになっているからです。
この記事では、なぜその思い込みが起きるのかと、高崎で実際に申告が必要になる典型的なパターンを書きます。
目次
「うちは大丈夫」の根拠は、たいてい2つしかない
1つ目は、昔の基礎控除で考えている
相続税がかかるかどうかの分かれ目は基礎控除です。いまの基礎控除は次の式で計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
配偶者と子2人なら4,800万円です。ところが平成26年までは、5,000万円+1,000万円×法定相続人でした。同じ家族構成なら8,000万円。平成27年の改正で、控除額が6割に縮んだことになります。
「相続税は資産家の税金」という感覚は、この改正前に作られたものです。親御さんの世代がそう言っていた、あるいはご本人が昔そう聞いた。その記憶のまま今も判断している方が、本当に多くいらっしゃいます。
2つ目は、不動産を間違った物差しで見ている
自宅の価値を、毎年届く固定資産税の納税通知書の金額で把握している方が多くいます。ところが相続税で土地を評価するときに使うのは、原則として路線価です。固定資産税評価額とは別の基準で、水準も違います。
この違いを知らないまま「うちの土地は1,000万円くらい」と思っていた方が、実際に評価してみると相当上振れする。そういうことが起こります。逆に、形の悪い土地や広すぎる土地は、正しく評価すれば下がることもあります。どちらにしても、通知書の数字をそのまま使うと判断を誤ります。
全国では10人に1人。数字はいま過去最高
国税庁が公表した令和6年分の相続税の申告事績によると、その年に亡くなった方は約160万5,000人。このうち相続税の課税対象になった方は16万6,730人でした。課税割合は10.4%で、過去最高です。
10人に1人を超えました。基礎控除が引き下げられた平成27年以降、この割合は一度も下がっていません。地価と株価が上がり続けているためです。
課税対象になった方の1人当たりの課税価格は平均1億4,025万円、税額は平均1,946万円でした。財産の中身は、現金預貯金等が34.9%、土地が30.2%、有価証券が17.8%、家屋が4.8%です。
群馬県の課税割合は全国平均より低い水準が続いています。それでも「関係ない」と言い切れる数字ではありません。そして高崎市は県内でも地価が高い地域です。
高崎で申告が必要になる典型パターン4つ
パターン1|自宅+退職金+預金の会社員だったご家庭
いちばん多いのがこの形です。高崎市内に自宅があり、退職金を受け取り、それを大きく取り崩さないまま預金として持っている。ご本人には資産家という意識がまったくありません。
自宅の土地建物で2,000万円台、預金で3,000万円台、これに生命保険や有価証券が少し。合計すると基礎控除を超えます。特に配偶者が先に亡くなっていて相続人が子2人だけの場合、基礎控除は4,200万円まで下がります。
パターン2|先代から土地を引き継いでいるご家庭
自宅のほかに、農地、駐車場、貸している土地、使っていない畑がある。高崎の郊外では珍しくない形です。
この場合、預金はさほどないのに評価額だけが大きくなります。しかも土地は分けにくく、売ってもすぐには現金になりません。相続税は原則として現金で、10か月以内に納めます。「財産はあるのに納税資金がない」という状態は、この形から生まれます。
パターン3|自営業・会社経営をされていたご家庭
事業をたたんだあとも法人が残っている、あるいは自社の株式をご本人が持ったままになっている。この株式も相続財産です。
上場していない会社の株式は市場価格がないので、決算書をもとに評価します。利益を出して内部留保を積んできた会社ほど、株価は高く出ます。ご家族は「もう商売はやっていないから関係ない」と思っているのに、評価すると数千万円になっていた。これは実際に起こります。
パターン4|相続人がひとりしかいない
お子さんがひとり、あるいは配偶者もお子さんもいなくて相続人が兄弟姉妹のひとりだけ。この場合の基礎控除は3,600万円です。
自宅と預金だけでも超えることがあります。財産の額は同じでも、相続人の人数が少ないほど申告が必要になりやすい。ここは見落とされやすいところです。基礎控除の考え方は相続税はいくらからかかるのか|「3,600万円」の本当の意味で詳しく書いています。
財産に入るのを忘れられがちなもの
ご家族が財産を数えるとき、抜け落ちやすいものがあります。
・生命保険金(500万円×法定相続人の数を超える部分)
・死亡退職金(同じく500万円×法定相続人の数の非課税枠あり)
・配偶者やお子さん名義になっているが、実質はご本人のものだった預金
・亡くなる前一定期間内の生前贈与(令和6年以降の贈与から、段階的に7年前まで加算されます)
・自宅以外の不動産、山林、私道、共有持分
とくに3つ目は、税務調査でもっとも指摘される項目です。「子どもの将来のために」と親御さんが子ども名義の口座に積み立てていたお金は、通帳も印鑑も親が管理していれば親の財産として扱われます。これについては名義預金とは|家族名義の預金が相続財産になる理由をご覧ください。
「特例を使えばゼロ」でも申告は必要
ここが最も誤解の多いところです。
自宅の土地の評価を最大80%下げる小規模宅地等の特例も、配偶者が取得した財産について1億6,000万円まで税金をゼロにする配偶者の税額軽減も、申告書を提出して初めて使える制度です。
つまり「特例を使えば税金はゼロだから、何もしなくていい」は成り立ちません。申告しなければ特例は適用されず、基礎控除を超えた部分にそのまま課税されます。期限を過ぎれば加算税と延滞税も加わります。
計算した結果ゼロになるのと、申告しなくていいのは、まったく別の話です。小規模宅地等の特例の要件は小規模宅地等の特例で自宅の土地の評価が80%下がる仕組みにまとめました。
まずは概算を出すところから
「うちは大丈夫」かどうかは、感覚ではなく数字で確かめられます。必要なのは、財産の種類とおおよその額、そして相続人が何人になるかだけです。
当プラザのサイトに、いくつかの質問に答えるだけで申告が必要かどうかの見当がつくかんたん相続税診断を用意しています。まずはここから始めてみてください。
そのうえで気になる点が出てきたら、ご相談ください。相続が起きてからでは選べる手が限られます。まだ何も起きていない段階で正確な位置を知っておくことに、いちばん価値があります。
相続税のご相談は、たかさき相続税・贈与税相談プラザへ
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