相続税申告の税理士報酬の相場|遺産総額1億円ならいくらか【群馬・高崎】

「先生、これ全部で、いくらかかるんですか」

初回の面談で、最後にこれを聞かれます。だいたい皆さん、帰り際に、少し言いにくそうに切り出されます。

聞きにくい質問ではありません。むしろ最初に聞くべきです。相続税の申告報酬は事務所ごとにばらつきが大きく、同じ財産でも倍近く違うことがあります。しかも、見積書の形が事務所ごとに違うので、並べても比べられません。

相場の水準と、見積りを比べるときに何を揃えればいいのかを書きます。

相場は遺産総額の0.5%〜1.0%

まず水準です。相続税申告の税理士報酬は、遺産総額の0.5%から1.0%が目安とされています。金額に直すとこうなります。

遺産総額5,000万円=25万円〜50万円

遺産総額1億円=50万円〜100万円

遺産総額1億5,000万円=75万円〜150万円

この0.5%から1.0%という幅は、いまも業界の共通認識として残っています。もともと税理士の報酬には法律に基づく規程があり、遺産総額に比例して報酬が決まる仕組みでした。この規程は2002年に廃止され、価格は自由化されています。それでも各事務所が似た水準に落ち着いているのは、旧規程の骨格が残っているからです。

ですから、1億円の相続で「30万円」と言われたら安すぎますし、「200万円」なら高すぎます。まずこの物差しを持ってください。

ちなみに、相続税の申告のうち税理士が関与しているのは86.3%です。申告書は財産の内容によっては何十枚にもなりますし、土地の評価明細だけで分厚くなります。8割以上の方が依頼しているのは、それだけの手間がかかるからです。

内訳は「基本報酬+加算報酬」

ほとんどの事務所は、報酬を2階建てにしています。

基本報酬は、遺産総額で決まります。加算報酬は、手間が増える事情ごとに上乗せされます。ホームページに載っている「◯◯万円から」は、たいてい基本報酬だけの金額です。

加算が付く代表的なものは、次のとおりです。

相続人の数。2人目から1人につき基本報酬の10%前後

土地。1つの利用区分につき5万円〜10万円

非上場株式。1社につき15万円以上

申告期限までの残り期間が短い場合の割増

基本報酬50万円の見積りでも、相続人が3人で土地が4区分あれば、10万円と20万円から40万円が乗ります。合計で80万円から100万円です。最初の数字とはまるで違います。

これは水増しではありません。相続人が増えれば戸籍も分割協議も増えますし、土地は1区分ごとに現地と役所を回ります。手間が実際に増えます。ただ、依頼する側からは見えにくい部分です。

見積りを比べるときに揃える3点

相見積もりを取っても、そのままでは比較になりません。以前、2つの事務所の見積書を持って相談に来られた方がいました。40万円台と70万円台。倍近い差に見えましたが、内訳を並べ直すと、安いほうは基本報酬だけで、土地の加算も書面添付も入っていませんでした。最終的な金額はほぼ同じでした。

1.「遺産総額」の定義を確認する

同じ「遺産総額1億円」でも、意味が違います。借金を引く前のプラスの財産だけで見るのか、債務を引いた後で見るのか。小規模宅地等の特例を使う前の評価額か、使った後か。特例を使えば土地が8割下がりますので、どちらで数えるかで報酬は大きく変わります。多くは特例適用前・債務控除前ですが、確認したほうがいいです。

2.土地は「筆」ではなく「利用区分」で数える

登記簿上は3筆でも、1つの自宅の敷地として一体で使っていれば1区分です。逆に、1筆の土地の半分を自宅、半分を貸駐車場にしていれば2区分になります。数え方を聞かないと、見積りの土地加算が妥当か判断できません。

3.何が含まれていないかを聞く

書面添付、二次相続の試算、遺産分割協議書の作成、準確定申告。このあたりは、含まれている事務所と別料金の事務所があります。登記の費用と不動産鑑定の費用は、どこでも税理士報酬とは別建てです。「入っていないものは何ですか」と聞くのが、いちばん早いです。

おまけ:見積りは動くことがある

最初の見積りは、その時点で分かっている財産をもとに作ります。ところが作業を進めると、聞いていなかった土地が出てきたり、遺産総額が大きくずれたりします。名義預金が見つかって財産が増えることも珍しくありません。そうなれば金額は変わります。

大事なのは、どういう場合に増えるのかを先に説明してもらうことです。「増えることもあります」ではなく、「土地が1区分増えたら◯万円」と決まっていれば、後で揉めません。逆に減額されることもあります。

期限が近いだけで2割から5割上がる

相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月です。この期限は延長できません。

残りが3か月を切ると、他の案件を止めて先に処理することになりますので、20%から50%の割増が付くのが一般的です。2か月を切るとさらに上がります。基本報酬50万円なら、60万円から75万円になる計算です。

しかも、期限が近い案件は断られることがあります。残り3か月を切ると、選べる事務所が減ると考えてください。

費用を確実に下げる方法は、実はこれだけです。早く動く。四十九日が終わったあたりで一度相談に来ていただければ、割増は付きませんし、そもそも自分で申告できるケースかどうかも判断できます。

報酬は債務控除できない。ただし誰が払うかは選べる

よく誤解されていますが、相続税申告の税理士報酬は、相続財産から債務として引けません。亡くなった方の借金ではなく、相続人が申告のために負担する費用だからです。

一方で、相続人のうち誰が払うかに決まりはありません。ここは選べます。

財産を多く取得した配偶者が払うと、有利になることがあります。配偶者は税額軽減があるため今回の相続では税負担が軽く、その配偶者の手元財産を報酬の分だけ減らしておけば、次にその配偶者が亡くなったときの相続財産が減るからです。数十万円の話ですが、二次相続の税率が高い家では効いてきます。

支払いの時期も確認しておいてください。着手時に半分、申告後に残り半分という事務所が多いです。相続税そのものの納付は申告期限までに現金で必要ですので、そこと重ならないよう資金の段取りを立てておくと慌てません。

50万円の差より、土地のほうが大きく動く

最後に、身も蓋もない話を書きます。

遺産1億円で0.5%と1.0%の差は、50万円です。安いほうを選べば50万円浮きます。ただ、土地の評価をどこまで詰めるかで動く税額は、それより大きくなることがあります。土地の評価は税理士によって変わりますので、報酬を50万円節約して税額が100万円増えれば、差し引きで損です。

かといって、高ければ丁寧というものでもありません。値段と中身は連動していません。だから見積書の内訳を見て、何にいくら払うのかを確認する必要があります。金額だけを見ないでください。

判断の基準は、相続税に強い税理士の見分け方に書いた質問と同じです。年間の件数、土地を誰が現地で見るか、書面添付を付けるか。この3つに答えられる事務所なら、金額は相場の範囲に収まっているはずです。

見積りは、内訳を出してお渡しします

基本報酬がいくらで、どこに加算が付くのか。含まれていないものは何か。全部書いた見積書をお出しします。他の事務所と並べて比べていただいてかまいません。まずは財産の内容をお聞かせください。

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公認会計士・税理士 長島祐太